教員国内研修報告/2021年度国内研修報告

国内研修を終えて

高田馨里

 2020年度の国外研修準備にあたって、訪問研究員を行う予定であった大学からコロナ感染症問題で大学は閉鎖になってオンライン授業を展開すると連絡があり、最終的に国内研修に変更することにしました。そして日本女子大学の文学部の藤永康政教授を指導教官として、日本女子大学で研修を行うことにしました。そこでも、オンラインでの研究会などが中心でしたが、新しく開館したばかりの図書館に通って資料調査等を行うことができました。藤永先生のご専門は、アフリカ系アメリカ人の歴史であり、大都市シカゴをリサーチ対象としています。私自身は、航空関連研究を主に行ってきましたが、サブフィールドとしてアメリカの軍隊と人種問題を研究してきたので、藤永先生の指導のもとで、また日本女子大学図書館のスタッフのみなさんのおかげで、このテーマについて研究を深めることができました。その成果は、2022年度の『大妻比較文化』に掲載した論文となります。
 1年間の国内研修のその他の成果としては、イギリスのマンチェスター大学が発行しているJournal of Transport Historyという学術誌の編集者から連絡があり、書評を担当しました。担当した書籍は、もともとルフトハンザ航空のパイロットをしていたという経歴の持ち主で、現在は山梨学院大学で教鞭をとっているJürgen P. Melzer先生のWings for the Rising Sun: A Transnational History of Japanese Aviation (Harvard, 2020)という日本の航空の歴史を描いたものでした。日本の航空関連資料、とくに第二次世界大戦前後の航空技術開発をめぐる資料の多くは廃棄されたか焼け落ちてしまったため、もしくは多くの犠牲者を出した戦争に関与したという理由でご遺族が公表しない場合も多いため、新資料の発見は極めて難しい状況です。Melzer先生は、日本に技術移転したアメリカやイギリス、ドイツの資料を駆使して、日本の航空技術の進歩を明らかにしたのです。改めて国際的な文脈から日本の航空技術の発展の経緯を学びなおすことができた素晴らしい機会となりました。
 コロナによってオンラインでのやりとりが加速度的に便利になった結果、海外の研究者たちとの共同研究へも積極的に参加できました。その成果が今年6月に実現したワークショップでした。そこでも、ヨーロッパ、アメリカ、アジア諸国、南米などの研究者たちと知己を深めることができました。その成果は、来年になりますが、形になりそうです。物理的に移動することが困難な時期に当たりましたが、かえって国際的な研究を進めることができたというのが、私の国内研修の成果でした。今後はまた国際学会も対面で行われることになりますが、積極的に研究成果を発表していきたいと考えています。