銭ゼミ

アイスランド・中国から見る日本の政治とジェンダー

升本果歩

 現在の日本において、女性の政治参画は遅れており、女性議員の比率は衆議院9.9%(2022.7.8)で参議院25.8%(2022.7.28)である。女性議院比率の国際比較を見てみると、衆議院の女性議員比率は190カ国中164位とかなりの遅れをとっている。日本では、ジェンダー平等に向けた政策が推し進められているが、政治分野において男女格差が生まれてしまっていることに疑問を抱いた。多くの研究者がジェンダーと政治に関する論文を執筆している。だが、他国と比較をする論文や日本の政治の可能性に言及した論文は少ない。
 そこで本稿は、日本の政治と女性に焦点を当てて、現在の日本の制度や法律、男女格差の現状からどのような制度が必要であるのか、アイスランドと中国を通して見ていくとともに、ジェンダー平等と女性の政治参画の可能性を考察した。第1章では、日本における女性政治参画の現状を述べていき、女性の政治参画を阻む原因である家事・育児の男女格差、固定的性別役割分担意識からジェンダー平等の必要性を論じた。第2章では、アイスランドと中国のジェンダー平等及び女性の政治参画を見ていき、日本の課題解決に向けて参考にするべき点は何かを論じた。第3章では、女性議員の増加を期待できる候補者男女均等法とクオータ制を取り上げ、今後の日本政治及びジェンダー平等への可能性を論じた。
 第1章から第3章を通して、現在の日本では女性議員に対する理解やサポート、育児に関する問題、さらには女性が立候補及び議員として活動する際の議会・政党での取り組みに問題点が多くあり、なかなか政治参画が難しいという現状であることが明らかとなった。また、日本の女性政治参画の課題を解決していくためのヒントを導き出していくために、アイスランド・中国で取り組んでいる政策を見てきた。その結果として、日本での女性の政治参画を促進していくためには、育児休業法に強制力を持たせ、男性も育児をしやすい環境をつくっていくこと、固定的性別役割分担意識では、学校教育でジェンダーに関することを積極的に取り上げ、教育の場で固定的性別役割分担意識をなくしていくことや、一人一人のジェンダー平等に対する声を積み重ねていくことが重要であることが明らかになった。
 さらに、女性議員が増えることで考えられる日本政治の可能性に関して、女性議員が増えていくことで、議論が多様化していき、生活に直結する事柄について、より多様な人々の声の反映が行われることで女性だけではなく男性にとっても暮らしやすい社会が形成されていくことが明らかとなった。そこで、第3章で取り上げたクオータ制は日本でも導入を考える時期に来ており、多様性のある社会の実現を期待できる。女性の政治参画は、女性の視点を政策に生かすためだけに必要なのではなく、社会の多様な声を政治に反映し、国民の納得を得るために必要なのだと主張した。