武田ゼミ

日本にフードバンクを浸透させるためには

長岐泉良

 本論文では、SDGsや貧困の観点から、日本でフードバンクを浸透させるためにはどうしたら良いかについて検討する。ここでいうフードバンクとは、農林水産省の定義によると、食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設などへ無料で提供する「フードバンク」と呼ばれる団体・活動のことである。また、消費者庁の定義によると、包装の印字のミスや賞味期限が近いなど、食品の品質には問題ないが、通常の販売が困難な食品・食材を、NPO等が食品メーカーから引き取って、福祉施設等へ無償で提供するボランティア活動のことである。
 第1章では、フードバンクの歴史を検証する。先進的な海外の動向としてアメリカとフランスを取り上げ、食品ロス・フードバンクの現状について論ずる。そして、フードバンクが国に根付いていることに繋がると考えられる、アメリカとフランスの食品ロスとフードバンクに関わる法制度について検証した。
 第2章では、日本における食品ロスの実態について、食品ロスの現状、食品ロス削減のための取り組み、食品ロスに関する法制度の3つの視点から論じる。食品ロス削減のための取り組みについては、事業者ができることと、実際に企業が取り組んでいる事例を挙げる。食品ロスに関する法制度については、2019年10月に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律」と、2001年5月1日に施行された「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」の施策を検証した。
 第3章では、日本におけるフードバンクの歴史を検証し、日本のフードバンクの仕組みや目的を説明する。また、日本における貧困とフードバンクの関係性を、新聞記事を基に明らかにする。なお、日本の貧困においては、主に子どもに焦点を当てて検証する。そして、日本のフードバンクの課題点を挙げ、フードバンクの必要性について論じた。
 結論として、日本でフードバンクを浸透させるためには、食品ロスやフードバンクに関する法制度を改め、国民1人1人のフードバンクの認知度を高めるが必要だと考察した。SDGsの目標に、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「つくる責任つかう責任」があることから、日本の社会でもフードバンクの存在は今まで以上に注目されることだろう。食品ロス削減と、誰もが食に困らない生活を送るためにも、日本でフードバンクが浸透してほしいと考える。そのためには単にメディアに頼るのみではなく、義務教育過程で食をめぐるSDGsについて子供たちに考えさせるような機会も望ましい。