酒井ゼミ

韓国映像コンテンツ産業の現状と振興

宗像真凜

 韓国では1998年に金大中大統領が文化大統領宣言を行い、文化に対する厳しい規制緩和や財政支援をするなど韓国のコンテンツ産業に対して注力するようになった。2000年代からはアジア諸国で韓流現象が起こり、近年では韓流現象が世界中で起きている。コンテンツ産業の中でも、特に映像コンテンツ産業は、ネットワーク社会の到来によって国際流通が容易なものとなった。
 先行研究では、韓国映像コンテンツ産業の発展と海外市場への拡大において、韓国政府がどのように関わってきたのかについて明らかにしている。また近年は、多機能メディアと配信サービスが世界的に普及し、韓国映像コンテンツ産業に変化をもたらした。韓国映像コンテンツ産業の進化の過程を分析しながら、時代と共に発展してきた制作環境の進化を明らかにしている。
 しかし、韓国映像コンテンツ産業に対する韓国政府による支援政策の現状や振興については検討されていない。そこで本論文では、現在、韓国政府が映像コンテンツ産業に対してどのように関わり、韓流現象を拡大し続けようとしているのかを明らかにした。
 第一章では、韓国政府による映像コンテンツ産業支援割合について、現状の資金支援から検討した。その結果、2000年以降と同額割合の資金支援が維持され、製造業や観光など関連産業の商品競争力を高めることに繋がったことが明らかになった。
 第二章では、国営の韓国映画アカデミーと、韓国コンテンツ振興院による人材教育支援の実態について調査し、近年の制作環境変化について検討した。その結果、人材が重要な産業となるため、国営教育機関以外でも大学と政府が一体となった人材教育が行われていることが明らかになった。世界中の人に評価される作品を制作する環境を整え、優秀な人材を育成することに注力されている。
 第三章では、2000年代前半のアジアにおける韓流現象の起因と欧米での韓国映像コンテンツ受容について検討した。その結果、韓流現象はこれまでの文化流行概念を覆すものであり、社会情勢や国家関係などの外的要因も影響してきたと明らかになった。また、海外ビジネスセンターを設置し、現地マーケティングや各国の制作会社との提携を可能としたことが、世界進出を促したと明らかになった。
 第四章では、韓国映像コンテンツとNetflixの関りについて検討した。その結果、Netflixの韓国進出が、韓国国内の配信サービス事業者に対する韓国政府の支援を促したと明らかになった。現在韓国政府は、資金支援とインフラ整備をすることによって、自国事業者の発展を促し、韓国経済も発展させようとしている。
 一方で韓国では、コンテンツ産業による地域文化産業振興強化政策が行われているが、問題点が多い。今後の映像コンテンツ産業を通した地域文化産業発展をどのように成功させ、国内経済を発展させていくのかが課題となる。