オーストリア夏季研修(3年次演習)

ウィーン現地調査を終えて

竹内舞衣

 大学3年生の夏、渡邉ゼミの文化研修のためオーストリアのウィーンに1週間滞在しました。「仲間と感情を共有しながら、五感で文化を体感したい」という想いを抱いておりましたが、入学からの2年間はコロナ禍のため実現が難しく、人との繋がりや行動範囲が閉鎖的な日常に距離を感じる日々でした。今回は3年ぶりに海外渡航が解禁され、渡邉先生をはじめ現地研究者のお力添えの元で目標を達成できました。
 ウィーンの街並みはどの瞬間を目に焼き付けても絵になる景色で、宮廷文化の世界観がそのまま広がっていることに心を打たれました。300年前の本の挿絵と比較しても大きく変わることなく、大聖堂や宮殿など王朝時代の空気が今日も芽吹いていました。
 研究では主にイエズス会演劇を中心に取り上げ、古代ギリシャローマの演劇や中世教会の比較、近世ヨーロッパで描写された日本人について考察しました。午前中はオーストリア科学アカデミーで特別講座を受講し、午後は建築物や芸術作品に触れながら学びを深めていきました。講義を受けた直後に鑑賞する教会は格別で、特にイエズス会教会ではバロック様式の壮大で吸い込まれるような装飾に目が離せませんでした。博物館や美術館では先生方が隣で解説してくださり、展示品を通して当時を生きた人々の生活や考え方をより身近に感じられました。
 ウィーンでの日々を振り返ると人々の温かさを感じる機会が本当に多く、思いやりに溢れた環境下でたくさんの経験ができました。最初は異国での生活に適応できるか不安もありましたが、音楽学生や研究者の方が現地での生活や文化を教えてくださり、大きな手助けとなりました。滞在先は築100年越えのアパートで、宿泊というよりも現地で日常生活を送っている感覚で過ごせました。天然水が飲める水道水、涼しい気候、交通機関、平穏な街、食事。ウィーンが織りなす風土を体感する度に訪れて良かったと感じさせてくれます。放課後は先生と仲間で街を散策し、歴史あるカフェや建築物を巡りながら濃密な時間を過ごしました。また、店員さんとは英語でコミュニケーションを取り、ドイツ語での挨拶も挑戦できました。中には日本語で「ありがとう」を伝えてくれた方もいて、この一瞬の出会いで得られた温かさはかけがえのないものです。語学力はまだまだですが、英語を通して心を通じ会えた経験は、積極的なコミュニケーションの活力になったと実感しています。
 リモート越しのコロナ禍を経験したからこそ、五感をすべて使って文化を体験できることが本当にありがたく、人々の繋がりや平和な日常の大切さを痛感しました。この文化体験をきっかけに、友達が学んでいる分野と交えながら共有できる機会も増え、帰国後も日々勉強になっています。この経験が一生の財産となり今後の自分に生き続けていく、感謝を胸に日々成長していきたいです。