特別講義要旨

授業内特別講演会:大瀬留美子「ソウル、いま私がいる場所」

酒井雅代

 12月15日(木)、「比較文化演習4-Ⅱ」の授業において、韓国観光情報サイトや雑誌のライターとして活躍されながら、ブログ「韓国の近現代文化遺産(旧韓国古建築散歩)」を主宰されるなど韓国の古建築にも詳しい、大瀬留美子先生をお招きし、「ソウル、いま私がいる場所」と題して、ご講演いただきました。
 今回のご講演では、大瀬先生が韓国に出会ってから今までの「一代記」を、その時どきの「韓流」とともにお話しいただきました。
 大瀬先生が渡韓された2000年前後の時期には、韓国の情報はそれほど多くはありませんでした。先生は、新大久保の韓国ショップに行き、ビデオテープで韓国のテレビ番組を、カセットテープやCDで韓国の音楽を手に入れたり、テレビの「アジア映画劇場」では時々府営される韓国映画を楽しんだりして、韓国や韓国文化にふれていったそうです。
 その後、サッカーワールドカップの日韓共同開催により、日本で韓国に対する関心が高まるなか、ソウルでライターを始められた頃のお話や、東日本大震災後、韓国で子育てをしながらお仕事をされていた時のご苦労についても教えていただきました。そのようなご経験を通じて、韓国の文化や歴史へと関心を深めていったというお話をお聞きしました。
 質疑応答の時間には、同じく植民地であった台湾と比較すると、韓国に残る近代文化遺産にはどのような特徴があるのか、韓国の文化遺産の保護はどのような人がおこなっているのかなどについて質問が挙がりました。応答の中では、韓国で近代文化遺産の保護が始まったのが2001年のことで、登録されている建造物・記念物がまだそれほど多くない点や、最近では若い人の感性で近代文化遺産のリノベーションが進み、カフェやコミュニティスペース、文化発信地として利用されていることなどが紹介されました。
 また、講師の先生の年代と今の学生のみなさんの意識が違うように、韓国でも日本や日本人に対する意識は世代によって違うのではないか、今の韓国の若い人たちはどのように考えているのだろうか、という質問も寄せられました。
 学生のみなさんにとって、韓国の音楽や映画、メイクやファッション、食べ物など、「韓流」はもはや一過性のブームにとどまらず、ごく身近な文化のひとつになっています。しかし、ついこの間までは、自らアクセスしないと韓国や韓国文化を知ることができなかったという講師の先生のご経験は、学生たちには新鮮な驚きとともに受け止められました。また、コロナ禍で気軽に渡韓とはいかない状況のなか、実際の韓国のお話を聞けたことも、良い刺激となりました。