久保ゼミ

コンテンツツーリズムが地域社会に与える影響
―「アニメ聖地巡礼」と「サッカー観戦」を事例に―

野口彩夏

 近年コンテンツを観光資源として活用したり、コンテンツを旅行動機とする傾向がある。本論文ではコンテンツツーリズムの中でも、アニメツーリズムとスポーツツーリズムを対象として地域社会に与える影響と発展性について考察した。
 第1章では、アニメツーリズムの具体例として、静岡県沼津市を舞台とした作品「ラブライブ!サンシャイン!!」を取り上げた。実際の取り組みから、ファン同士や地域とファンとの良好な関係性が構築されたことが分かった。ファンの満足度をさらに高めるための商品・サービスの消費は、沼津市内に経済効果をもたらした。また「聖地巡礼」の持続的な展開に重要なのは、自治体や地域企業の協力や地域社会からの積極的なアプローチである。積極的にファンを誘致することに加え、地域住民が利用する公共の場での取り組みは効果が高い。「聖地巡礼」の発展や継続のためには、アニメのファンから地域のファンにもなってもらうことが必要不可欠である。そのためには立場を越えた交流を続けていくことが重要だ。
 第2章では、スポーツツーリズムによる地域活性化への取り組みについて述べた。具体例としてプロサッカーチームの鹿島アントラーズと茨城県鹿嶋市の取り組みを挙げた。鹿島アントラーズによる、サッカー観戦をコンテンツとした取り組みが、チームと行政、地域社会の協力関係を形成している点が明らかになった。自他チームのサポーターに加え、純粋にサッカーを楽しむ人々を広く受け入れ、観光客の満足度は向上する。また地域住民との交流の場を増やし、リピーターや移住・定住人口の増加にも繋がっていることが分かった。
 第3章ではそれぞれの特徴を踏まえ、コンテンツツーリズムの影響力と今後の発展について検討した。コンテンツツーリズムの効果とは、地域に新たな観光資源をもたらし、地域の活性化や課題の解決に結びつくことである。さらに地域の「関係人口」の増加にも繋がっている。そして、コンテンツツーリズムの定義にある「地域性」「テーマ性」「物語性」の側面から静岡県沼津市と茨城県鹿嶋市の事例を比較した。ターゲットが限定的である沼津市の事例とは対照的に、鹿嶋市の事例は幅広い世代に開かれている。また、「アニメツーリズム」と「スポーツツーリズム」の共通点として、地域を訪れるコンテンツのファンに、地域資源にも興味を持ってもらう取り組みが行われていることが挙げられる。以上の点をもとに、コンテンツツーリズムの可能性について考察した。