授業内講演会要旨

フェリーナ・N・キング先生「先住民の大地の聖なる水の流れ―それをめぐる消去と強奪の歴史」

佐藤円

 2022年6月9日(木)に、日本アメリカ学会年次大会参加のために来日中であったオクラホマ州立ノースイースタン大学准教授のフェリーナ・N・キング先生を「アメリカ研究入門A」(アメリカ文化コース2年生)の授業にお招きして、「先住民の大地の聖なる水の流れ―それをめぐる消去と強奪の歴史」と題して英語による講義をしていただきました。講義では、アメリカ南西部のアリゾナ州に暮らすアメリカ先住民と白人の入植者の関係を歴史的にたどりながら、先住民の土地や水資源がどのようにして白人入植者に奪われていったのか、またその歴史がどのように歪曲されて伝えられ、また時には歴史の語りから消されていったのかについて説明されました。ご自身もアメリカ先住民ディネ(ナヴァホ族)出身であるキング先生は、先住民の視点で歴史を見ることによって起こるアメリカという国家の成り立ちに関する認識の転換がいかに必要であるかについて熱心に語られ、講義を受講した学生たちも問題の当事者からの訴えかけに強く心を動かされていました。キング先生が提議されたような問題は、北海道の歴史の語りとアイヌ民族の関係に置き換えて考えてみれば、日本の問題でもあることに多くの学生が気がついたようです。
 講義での使用言語は英語でしたが、前週の授業であらかじめ担当教員が翻訳した講義原稿を使って内容についての予習をしていたため、当日は同時通訳を入れずにそのままお話をしていただきました。学生たちにとっては少し難しい部分もあったかもしれませんが、アメリカの大学教員による生の授業を体験できる貴重な機会となりました。
 講義の終わりには、担当教員の3年、4年ゼミに所属する学生による英語での質疑が行われました。その際には担当教員が通訳を務め、質疑応答の内容が2年生の学生にも理解できるように援助をしました。2年生にとって、英語で質問を行う上級生の姿は、よいロールモデルになったと思います。また頑張って英語で質問をした3年生、4年生にとっても、自分の英語運用能力を試すよい機会になったことは間違いありません。質疑の後、質問した学生に対しては、キング先生が事前に用意してくださったアメリカ先住民のハンドメイド・アクセサリーがサプライズ・プレゼントとして贈られました。