卒業論文中間発表概要

「日本・韓国・中国における犬文化の比較研究―犬食文化を中心に―」

千ヶ﨑愛

 今回の発表では、最初に、①鶏肉/養鶏場の鶏、②牛肉/牛舎の牛、③犬肉/ケージに入れられた犬の三つの写真を提示し、同じ生き物なのに犬の写真を見た時だけ、なぜ衝撃を受けるのか、私たちが肉と動物の関係に関して抱いている固定観念、感情の違いを実際に体験していただいた。
 続いて、私自身の経歴、小中学時代を韓国の釜山で、高校時代を中国の上海で過ごした際に感じた、犬に対する態度が国によって異なることへの疑問が、本テーマを卒業論文に選ぼうと思ったきっかけであることについて紹介した。
 今回の発表では、三ヶ国の犬文化の差異を論じることの有効性を示したく、「第1章 日本・韓国・中国における犬に関する言葉からみる犬文化」の朱銀花「⽇・中・韓三国の⾔語における⽝⽂化の考察〜⽝にまつわることわざを中⼼に〜」『歴史⽂化社会講義座紀要』第6号、2009年を参照した「第1節 犬に関することわざ」について時間をかけて紹介した。朱銀花によると、日本、中国、韓国のことわざにおける犬の役割を、狩猟・警備・食用の三種について調査したところ、日本では狩猟が圧倒的に多いのに対し、中国は警備用が最も多く、続いて食用が多い。韓国は圧倒的に食用が多いという結果になった。こうした結果を踏まえて、言葉の差異を生み出した三ヶ国における「犬」のイメージの変化や「犬食文化」の歴史について簡単に整理した。
 韓国は、現在でも「犬食文化」が一部の人々においては保存されると同時に、ペットとしての愛でる「犬文化」へと変化している最中である。こうした変化に至るきっかけはソウルオリンピック開催で直面した「犬食文化」への批判だった。国際社会からの批判を受けはじめ、様々な議論を経て、数十年が経った。現在の韓国政府は大統領自ら「犬食」の禁止に対して、SNSで犬との良好な関係をアピールするなど、「犬食」反対を様々な形で取り組み始めている最中である事も分かった。
 最後に、日本ではいつから「犬食文化」が消えたのか、生き物の種類によって感じる、衝撃・不快感の価値観はどの様に形成されるのか、昔に日本で起きた食文化の変化が、現在の韓国で起きている最中であり、この変化の流れを、実際に自分の目で見て今後の犬食のあり方について考えていきたいことなど今後の展望についても述べた。
 先生や友人たちからも有意義な質問やコメントをたくさん頂戴したことに感謝したい。