卒業論文中間発表概要

「ドイツの移民教育と移民二世・三世の権利意識」

梶原美弥

 卒業論文中間発表会にて、ドイツの移民政策に注目した研究の途中経過を発表した。発表会では、15分のプレゼンテーションの後に質疑応答の時間が設けられた。
 本研究は、先進的と評価されているドイツの移民政策を教育の面から追究したものである。特に、現地に暮らす移民二世・三世の権利意識に教育がどのような影響を与えているのかを明らかにしようとした。
 世界からは移民受け入れ国として大きな注目を浴びるドイツだが、中間発表ではまず直近30年で大きな変化を見せた移民政策と戦後の教育政策に焦点をあてた。近年の移民は出稼ぎとしての側面を持つだけでなく、受け入れ国の新たな労働力としての側面においても注目され、社会基盤として大きな意味を持つ存在である。実際にドイツでは、移民の困窮状態を改善し、新たな生活の場を提供するなど、社会包摂の支援を軸とした移民政策を掲げてきた。そのなかで移民二世や三世が育てば、彼らは自らが現地の人々と同じだと感じることができるのだろうか。現地の人と接するに当たって、差別だと判断する場合のきっかけや引き金のようなものはあるのだろうか。それを現地社会はどのように受け止めるだろうか。発表では、現地に暮らす移民二世・三世の権利意識と移民であるという認識について考察した。
 移民学生と現地学生の家庭環境の違いや移民学生の親のドイツ語能力における就業先の違いとの間には相関性があり、移民家庭では教育資金額が低くなることを確認した。これにより、現在ドイツが行っている移民政策の中の一つであるドイツ語講座は、ドイツ語能力の低い移民救済の一つの手立てとして機能し、効果が上がっていると考察した。また、世代ごとに移民であるという認識に差が生まれていることを明らかにした。移民二世、三世と世代を経るにつれ、権利意識は定着していることを明らかにした。
 その一方で、移民の子どもと現地の子どもが接触する教育現場では差別をめぐるトラブルがある。そうした事例を紹介し、移民二世、三世が権利意識を持つことに合わせて見えてくる受け入れ社会側の課題も考察した。
 質疑応答では「移民二世、三世とは具体的にどのような人なのか(時期、年齢層、出身国)」、「考察に用いているデータは古いのではないか」など、言葉の定義や依拠するデータを巡って自身が曖昧な状態で研究を進めていたことを痛感するとともに、答えや正解のない話題を取り上げて議論や主張を展開することの難しさを認識した。
 発表に際しては、多くの参考文献を読んだ。そして、書き手の数だけ意見があることを学んだ。私は他者の意見に振り回されがちだったが、卒業論文の執筆と中間発表を通じ、自分の意見を持った上で他人の意見を参考にすることの重要性を理解した。
 実際に質疑応答の際に挙がった意見の中で、特に重要性の高い指摘だと感じた意見は、卒業論文の執筆に反映させることが出来た。卒業論文だけでなく、人前で発表し意見や指摘を受けるという経験は、非常に意味のある機会であった。