学生の感想

特別講義:劉娟「中国における翻訳絵本の受容――児童教育との関連を中心に」を受講して

渡辺美波

 日本では、子供だけでなく大人からの絵本の人気もあり、私自身、絵本は純粋に楽しむものだと考えていた。しかし今回の講義で、絵本の在り方が日本と中国で異なっていることを知り、国によって考え方が異なることが興味深かった。中国では教育目的として絵本が扱われ、日本の絵本をそのまま翻訳し輸入しては人気が出ない。そのために、付録をつける工夫を凝らすことで購入につながることが、本に対する価値観も日本と中国で異なり、それが絵本市場にまで影響していることがわかった。
 私は絵本を使った国語の授業を受けたことがないため、中国での絵本を使った想像力の授業は関心があり、受けてみたい。この教育現場での絵本の活用を見出した中国は、中国ならでは教育を重視する価値観や、元々あった図画書と連環画の文化があったからこそ生まれた教育法であると考えた。日本の翻訳絵本が、教育方法という形で日本へ逆輸入される現象は非常に興味深く、文化の発展や融合はこのようにして生まれるのだと実感した。しかし翻訳絵本の可能性は、子供が海外の作品に触れる機会となり、多様な文化や価値観、宗教などの認識、興味関心の向上にあると私は考える。中国では教育面が重視されるために、教育的でないものは排除される傾向にあるようで、悲しく思う。子供が対象なため、教育面が重視されることも理解できるが、個人としては純粋に絵や言葉遊びを楽しむという側面も広がってほしい。
 絵本による教育を受けた中国の子供たちが大人になった時には、中国でも絵本の在り方が変化してくるかもしれない。両国の今後の絵本の動向に注目していきたい。