学生の感想

授業内特別講演会「古代ギリシャの美術と文化」を受講して

関口里佳

 神々や英雄の物語だけではなく、普通の人間の日常も主題として、詩情豊かに表現したギリシャ美術は奥深い。先日、古代ギリシャの美術と文化についての特別講義に出席した。ヨーロッパ美術としての源泉の歴史を興味深く考えるまたとない機会となった。この特別講義には古代ギリシャローマ美術の第一人者である中村るい先生が登壇して下さり、私の心はとても踊ったのを覚えている。

 古代地中海は、ギリシャに限らず大小様々な文明が興亡を繰り返し、衝突と融合のドラマチックな時代を拡げた舞台であったことを前置きに挙げたい。これはギリシャ美術を青銅器時代から幾何学様式時代、アルカイック時代、クラシック時代、そしてヘレニズム時代の5つの区分によって捉え、建築から絵画、彫刻、工芸など多角的な視点から言及した講義から私が印象深く感じたものである。ギリシャローマ美術を概観する時、ギリシャ美術の開始をいつに置き、ローマ美術の終焉をどの時代とするかが疑問であった。だが地中海域で最初に開花するクレタ美術をもってそこからシリアなど周辺地域の影響が認められることを知った。海上貿易や農業による経済的繁栄を背景として、動物や植物を明るく表す自然主義を特徴とするテラ出土の壁画は恵まれた自然環境をそのまま造形化したかのような作品であり面白かった。やがて豊かな自然主義から簡潔で硬直した形式主義へと推移する中で、地中海の混乱期が極められた。巨大文明の狭間で興っては消えていった数々の民族やキリシャ美術の変遷に各文明の対立、交流、影響関係に注目し歴史の躍動を掴むこととなった。それらがわずか数世紀のギリシャが物語っていることが大きなロマンであり古代美術の軸であるのだとも感じた。

 紀元前1000年中頃、ミケーネ文明とは異なる特徴を持ってエーゲ海一帯で誕生したのがギリシア文明である。初めて生きてる人間が描かれ、神々は人間と同じような姿をして同じような感情を持っていると考えられて来たことが非常に興味深い”はじまり”である。理想的な人間の体の形を描く事で神の姿を表し、肉体に完全な美しさと調和が求められたためだ。この当時だからこそ神々への賛美は特徴づけるものがあると感じる。人々が活発に色々な作品に挑戦する時代を迎えると、彫刻はより自然な人間の形を持つようになり、衣服のひだの美しさや独特の表情をたたえた事による動きが出て進化を遂げた。そして片足重心の動きによるコントラポストが後の美術の産業化とも呼べる賞賛の声を惜しまない数々の作品に見られるように残されているのだ。ギリシア美術はこうして、次第にその姿を変え、中世のキリスト教美術への土台を作っていき今日に知られるヨーロッパ風の文化となったのである。やがてローマを経て地中海、アラビア半島にも受け継がれヨーロッパ文化の発達に大きく貢献した壮大な流れはぜひ述べておきたい。世界史という大河の流れに浸って古代という時代をより専門的に考えていきたいという理由が、私が西洋古典学を志したきっかけであり理由である。