佐藤円ゼミ

南雲毬名

 私たちのゼミでは、今日の世界で依然として存在している「人種」や「民族」をめぐる対立や争いについて、各々が理解を深められるよう日々学んでいます。
 前期には、スチュアート・ヘンリ著の『民族幻想論―あいまいな民族、つくられた人種』を教材として用い、ゼミ生がそれぞれ担当箇所を報告しあいました。「人種」「民族」とはそもそもどのような概念でそれがどれほど曖昧なものなのか、そしてなぜ人はそれを信じて疑うことがないのかといった、このゼミで学んでいくうえで基本的なことについて理解を深めました。ゼミ生それぞれが相手に伝わりやすい発表を心掛け、そのために各々の担当箇所を深く理解するところからスタートしました。最初は難しく感じましたが、発表後には素朴な疑問や報告の内容から派生したものまで、ゼミ生同士で質問や意見などを交換し、そこから始まる議論はすべて興味深いものでした。
 後期には、平野千果子著の『人種主義の歴史』を教材として、前期と同様ゼミ生で報告を行いました。人種主義が生まれた背景を大航海時代のヨーロッパまでさかのぼって探求し、奴隷の歴史や「人種」概念を裏付ける「科学」の存在などについて理解を深めました。前期と後期の前半で学んだことをもとに、後期の後半ではそれぞれが興味のあるテーマについて報告を行いました。
 個人の報告では「人種」「民族」の問題に関するものに限らず、日本の移民問題やジェンダーに関するもの、スピリチュアルに関するものなど、その内容は多岐にわたります。それぞれがテーマに関する先行研究や参考文献を用いて報告を行いました。様々な内容の報告がありますが、すべてゼミで学んだ「人種」「民族」の問題となにかしらの共通点や類似点を持つ内容についての報告で、学んだ内容を自身の身近な問題に結びつけているゼミ生が多いです。前期や後期の教材で学んだことを、当事者性の高い身近な問題と結びつけ落とし込むことで、これまでゼミで学んだことについてもさらに理解が深まったように感じます。
 今年の佐藤ゼミでは、アメリカ文化コースの学生だけでなく、ヨーロッパ文化コースや他大学から編入してきた学生も多く在籍していて、自分の視点では思いつかなかったような意見が出てくることもあり、問題や考えを改めて一から見直すという機会が多くありました。物事はどこから見るかによって見え方が全く変わってきます。自分にはない視点を気づかせてくれるゼミ生や先生のもとで、一つの問題を様々な方向から見つめる、そんな多角的な学びをできるゼミを目指して、これからも頑張っていきたいと思います。