加藤ゼミ

ブロンテ姉妹の理想の女性像と結婚観−『ジェイン・エア』『嵐が丘』を比較して−

窪田愛美

 卒業論文では、ヴィクトリア時代に、女性作家によって書かれた小説にはどのような意味が込められているのか、ということに注目した。そこで結婚を主題としたシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』と、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』を取り上げ、当時の女性の理想像や結婚観について考察した。また、姉妹での結婚観の違いについて述べている。
 第1章ではまず、ブロンテ姉妹が過ごし、2つの作品が書かれたヴィクトリア時代について述べた。はじめに当時の時代背景や女性教育に注目しながら、女性の立場について明らかにさせた。また、ブロンテ姉妹に先行する時代に活躍した女性作家について考察し、当時の小説の役割を浮き彫りにさせた。19世紀の女性作家たちは、小説を書く十分なお金や部屋も無い中でペンを取っていたことがわかった。このような状況下で、結婚についての思いが女性作家たちによって描かれていたことが明らかとなった。
 第2章では、姉のシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』を取り上げた。第1章で明らかにさせた当時の女性を巡る風潮を踏まえた上で、登場人物たちの結婚観を考察した。バーサとロチェスターには当時の愛が無く、階級を気にした結婚が描かれている。しかし、ジェインは愛を重要視していることがわかる。作者シャーロットの思いは主人公のジェインに表れており、シャーロットも愛を重要視していたことが分かった。また、男女が対等な立場での結婚を望んでいたことが明らかとなった。
 第3章では、妹のエミリー・ブロンテの『嵐が丘』を取り上げた。キャサリンの性格を精査した上で、エミリーの結婚観を明らかにさせた。ヒースクリフとキャサリンは強く愛し合っているが、キャサリンはお金のあるエドガーとの結婚を選ぶ。ここには、当時の社会風潮が顕著に現れていることがわかった。エミリーは、当時の未婚の女性や上昇志向を持つヴィクトリア朝を批判するため、愛のある結婚ではなく、階級を気にした結婚を描いたことが考えられる。そして、キャサリンとヒースクリフが後世で結びつくという点からは、エミリーもシャーロットと同じく恋愛結婚を望んでいたことを述べている。
 以上のことから、シャーロットは男女が対等な立場での結婚を望んでいたが、エミリーは結婚に対し受動的であるという違いが推測できた。しかし、愛を重要視していたことは2人に共通していた。『ジェイン・エア』でジェインは最終的に「家庭の天使」を選んだように、シャーロットとエミリーの結婚観に多少の違いはあるが、ブロンテ姉妹にも当時の女性にも共通した意見は、恋愛結婚をし、その幸福な家庭で「家庭の天使」となることなのではないかと考察した。