ドイツ長期語学研修(比較文化学部主催)

私の6ヶ月間のドイツ生活

柳川若菜

 ”Herzlich willkommen in Deutschland!“
半分寝ぼけながら飛行機を降りる私にCAさんがかけてくれたこの言葉から、私のドイツ生活は始まりました。
 私はドイツの建築や人々の生活、クリスマスマーケットやオクトーバーフェストなどのイベント、サッカーやクラシック音楽などの文化に興味があり、ドイツ留学を決心しました。コロナ禍で今まで十分に大学生活を楽しめてなかった分、留学は私にとって重要な機会でした。
 しかし、ドイツでの生活は、最初は戸惑いだらけの毎日でした。交通ルールや信号のしくみがわからなくて自転車や車に轢かれそうになったり、街のどこでもタバコが吸えてゴミがポイ捨てされている状態に唖然としたり、電車やバスの乗り方がわからなかったり、初めての一人暮らしで料理も洗濯も1からのスタートなのに商品のパッケージや洗濯機スイッチのドイツ語が読めないし、国が違う子達と暮らしてるから掃除の基準や生活リズムも全く違ったり。
 その中でも特に戸惑ったのは”言語の違い”でした。そもそも私は英語もドイツ語も”イマイチ”な状態でドイツに来たので、最初の1ヶ月は会話をするのも精一杯でした。文で読むとすぐ理解できるほど簡単なのに、口で言われると何言っているか全く理解できない、Rの発音が聞き取れない、店員さんが言う数字や注文が早すぎて何もわからない。語学学校で一緒だった日本人の友達に助けてもらったり、ゆっくりとした英語で話してもらうなど、いろんな人に助けてもらいながら過ごしていました。そうやって過ごしているうちに机に向かって単語を覚えるより、とにかく話す挑戦をしたほうが覚えられることに気づき、今まで間違えちゃいけないと思って萎縮していたドイツ人との会話や授業中の発言も、散々間違えて直してもらいながらも自分から飛び込めるようになりました。今でもドイツ語は上手とは言えませんが、当初よりは語彙が増えて自分の意見やリアクションを伝えられるようになったと思います。そのおかげで、日本人も海外の人も今までに出会うことのなかったような人達と沢山友達になれました。
 また、土日は学校がお休みだったのでいろいろな場所に出かけました。電車で日帰りで行けるほど近い距離にある街や国でも、自分が住んでいたミュンスターとは全く違う人々の価値観や性格、街の特色があったのがとても興味深かったです。また、ホームパーティやクナイペ、サッカー観戦、オクトーバーフェストやクリスマスマーケットなど、ドイツにしかない独特な雰囲気や文化も味わえてとても良い思い出になりました。
 ドイツはヨーロッパの中心に位置し、移民や留学生がたくさんいるので、様々な国の人と関われたり自ら出向いて他国の文化も感じられるのがドイツ留学の利点の一つだと思います。そしてこのように様々な世界と触れられる環境にいたことで、自分に自信がついたこともドイツ留学の大きな成果です。日本では私は皆と同じような価値観で皆と同じように行動しなければと思っていました。そして他人と比べて自分に劣等感を感じてさえいました。しかしドイツでは違います。皆ミスを犯すことを恐れないし、皆と違う考えを持っていているのが当たり前で、それを誰も否定しません。そして自分の時間、自分自身をとても大切にします。それらは私にとって良い意味で衝撃的でした。何ヶ月か過ごしているうちに、自分は自分でいいのだ、誰かと違う自分は素晴らしいのだという自信が湧いてくるのを感じました。この気持ちはこれからの人生でも忘れずに大切にしたいと思います。
 ミュンスターで過ごした6ヶ月間は、とても短かったけれど私にとって大きな意味を持ちました。人生の転換点となったと言っても過言ではありません。私はドイツで他国の言語や文化を学ぶ楽しさや大切さ、多様な価値観を受け入れて自分自身も受け入れる重要さを学びました。まずこの留学という素晴らしい機会をくださった先生方や両親に感謝し、そして学んだことを忘れずに、これから自分がどこにいようと自分らしく羽ばたいていきたいと思います。