学生の感想

授業内特別講演会「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」を受講して

田村優衣

 上野リチは夫である上野伊三郎と出会って短期間で結婚を決めたり、日本語が分からないにもかかわらず京都に来るといった思い切った行動ができたりした背景には、彼女の祖母も起業しマーケティング戦略を取りながら商品を販売するなど先進的な考え方を持つ一家に生まれたことが大きかったのではないかと思いました。様々な事情によりキャリアを断念せざるを得なかった女性デザイナーも多かった中、リチをはじめとした女性デザイナーたちがキャリアや拠点を変えながら終生仕事を続けられたのは、当たり前のことでは無かったのだと知りました。復職のため声を上げるといった行動力の高さや、全面的に協力をしてくれて理解のある家族に恵まれたことが背景にあったのだと思います。講演で紹介されたレストランでは西洋の様式を取りつつも着物を着た人が座りやすいよう工夫されており、様式を輸入してそのまま使うのではなく、国ごとの文化背景を理解し実際に利用する人の利便性を考えてデザインされていたことが印象に残りました。

中川優奈

 初めて上野リチの作品を鑑賞して鮮やかな配色に目を奪われました。リチの植物をモチーフにしたテキスタイルには茎は細く繊細に、花弁や蕾は美しくダイナミックであり、彼女の植物に対する見方やファンタジーを知ることができました。また、幾何学模様の中に彼女独特の曲線やジグザグ線を入れることにより彼女らしさや当時の心境などを表していたのかもしれないと感じました。リチが手掛けた屏風では、四季を彩るような色使いが美しいと感じました。木々は春や夏を感じさせる新緑色、秋を迎え落ち葉を想像させる枯れ葉色、雪が積もる冬の白色。日本古来からの美しい色彩に、ウィーン工房やリチの特徴ともいえる幾何学模様を取り入れることで、彼女の新しい世界観が生まれたのではないでしょうか。ウィーンと京都を行き来し常に最先端にいたリチが日本の染織業やデザインに大きな功績を残したことがよくわかりました。