卒業論文中間発表概要

西洋女性のファッションの変遷
-コルセットからの解放をめぐって-

大塚はる菜

 卒業論文中間発表会では、16世紀から20世紀初頭のヨーロッパにおいて、「コルセット」に焦点を当てながら、ファッションや身体に対する女性の考え方がどのように変化したのかを明らかにした。
 第1章では、文学作品に登場する女性や英国王妃を取り上げ、時代や地域を横断し、コルセットについて概観した。物語や史実を読み解く中で、貴族階級の女性が着用していた装いが時代を経て大衆へと広まり、流行する過程が浮かび上がった。ファッションは、時代や国境を超えて受け継がれる一方、社会に応じて進化し、変化を遂げていくものである。
 第2章では、第一次世界大戦を境としてどのように西洋社会が変化したのか、モダニズムの時代の様相を明らかにした。大戦という時代の転換期に女性が少しずつ社会に進出していくようになったことで、男性は女性を「家庭の天使」としてではなく、共に社会へ歩みを進める動的な存在であると見なすようになったのではないかと考察した。
 第3章では、ジェンダーへの考え方が「複合的」になっていったことを指摘した。20世紀初頭、革新的な2人のデザイナーにより、女性はコルセットから解放され、より機能的で快適な衣服が台頭した。こうしたファッションの変化を概観し、社会に与えた影響を明らかにした。また、イギリス社会の保守的な貴族や上流階級の中にもポピュラーカルチャーに傾倒する人々が現れ、革新性と保守性が共存した時代であったことを言及した。
 16世紀から女性の装束として着用されたコルセットの歴史は、20世紀初頭に大きな変革期を迎えた。現代では、コルセットを着用がほとんど見られず、身体の拘束から解き放たれたように見えるが、ダイエット文化や拒食症など新たな問題が生じている。目に見える形でのコルセットは消滅したけれども、「見えないコルセット」として、女性の身体拘束は続いているといえる。美を求める姿勢が自己抑制を生む点で、過去も現在も大きく変わらず、身体的・精神的な解放には至っていないと結論づけた。