卒業論文中間発表概要

アメリカ合衆国におけるワークフェア政策
―1996年の福祉改革法が与えた影響とその課題―

白井美羽

卒業論文では、アメリカ合衆国において1996 年に施行された福祉改革法に焦点を当て、シングルマザーのマイノリティ女性を対象としたワークフェア政策の展開とその功罪を検証した。
 第1章では、1980年代の福祉改革と1996年福祉改革法の流れを追って論じた。第 1 節において、アメリカで福祉受給者は「福祉の女王」というイメージがついており、これは黒人女性のことを指していた。1980年代の福祉改革では、ウェイバー条項により、福祉改革は連邦レベルから州レベルに切り替わった。実際に、コミュニティ労働経験プログラムを取り上げた。第 2 節においては、1996 年の福祉改革法は、いかにも共和党的な考えであったことが読み取れた。さらに、連邦政府から支給された補助金の活用方法は州で自由に決められたため、連邦政府の管理が十分ではないことを明らかにした。
 第2章では、1996年福祉改革法により導入された貧困家族への一時扶助(TANF)と州レベルの福祉改革は、マイノリティの女性にとって多くの問題が生じていたことを明らかにした。第1節では、養育費の制度は自分の居場所が相手に知られるだけでなく、保育サービスを受けるには、福祉事務所に行かなければならず、彼女たちにはメリットがなかったと言える。第2節においては、カリフォルニア州の就労機会と子供に対する責任法(CalWORKs)とコミュニティ・カレッジを取り上げ、前者は雇用への障壁がある受給者に対しては、福祉の受給期間に猶予を持たせるような制度を導入するべきだと考察した。さらに、後者は新たなスキルを習得する機関として、2 年以上福祉を離れた受給者も、コミュニティ・カレッジを利用できるようにするべきだと考える。
 第3章では、カリフォルニア州の CalWORKs と介護労働の2点を事例として取り上げ、1996年の福祉改革における課題を明らかにした。第1節では、シングルマザーは貧困線以下の時給で働いており、生活を維持するためには、2つ以上の仕事を掛け持ちしなければならないことが明らかになった。交通費や車のガソリン代の費用は就業先が負担するように義務づける法改正を行い、メディケイドにおいては、受給者本人だけでなくその子どもも対象に含める制度の見直しが必要だと考察した。第2節においては、データを活用し、リベラルな州よりも保守的な州において、福祉改革が厳罰化している傾向が強いことが明らかになった。州によって福祉政策の内容や条件が変わるため、一定額の現金を給付するのではなく受給者の収入や養育費の受け取り状況によって現金の給付額を変更し、受給者に適した額を支給する方法が良いと考える。