本論文では、1900年代から近年までの国際的な難民政策の変遷を概観するとともに、難民発生国の近隣国だという地理的な理由から難民を多く受け入れてきておりそれゆえに難民受け入れ政策に関して国際的に高い評価を受けたウガンダを事例として取り上げることによって、今後の難民政策における自立支援プログラムの可能性に対する筆者の考えを論じた。
第1章では、UNHCRと国際難民制度の成立から現在までの変容を年代別に概観した。経済難民から紛争難民という難民の事情の変化と難民の長期化によって、1951年難民条約では現在発生している複雑な難民の事情に対応できていないことを明らかにした。
第2章では、人道支援と開発援助の連携の変遷について分析した。1960年代から人道支援と開発援助の連携については議論されており、近年においては規則や考え方としては世界的に統一されてきたものの、実際に取り組んだ事例はほとんどないことが明らかとなった。
第3章では、近隣国から多くの難民を受け入れているウガンダを事例に挙げ、これまでの難民政策の変遷とそのなかで採用されている自立支援戦略について概観した。ウガンダで行われてきた自立支援戦略に関しては一定の成果は出ているものの、未だ課題は残っていることが明らかとなった。
上記の検討を通して、今後の難民政策は自立戦略を推進していくべきであるという結論に至った。なぜなら、難民自身にとっては自立した生活ができた方が生活の質が向上し、受け入れ国や国際社会にとっても、難民の自立は負担の軽減と経済の活性化につながると考えるからである。ただ、ウガンダの事例をそのまま適用するのではなく、あくまで参考程度に留めて、実際にはそれぞれの受入れ国に置かれた難民の状況を深く調査してから自立支援に取り組むことが特に重要であると考える。
人道支援と開発援助の連携、アクターの協力、地元民との共働といった部分は今後も引き続き継続しつつ、自立支援のための援助が難民への強要にならないよう、難民居住地を定期的に調査することによって、難民と難民居住地の実態をUNHCRをはじめとする国際社会が把握し監視すること、そして受け入れ国の状況に最適な難民支援を模索していくことが今後の難民政策において必要であると考えた。