怪談話は誰もが一度は耳にしたことがある物語である。その内容は多岐にわたり、背筋が凍るような恐怖を与えるものから、思わず笑いを誘うような軽妙な話まで存在する。怪談は人々の心に深く根付いており、それぞれの時代や文化の中で形をかえながら語り継がれてきた。本論文では古代ローマと日本の怪談、とくに変身物語に焦点を当て、それぞれの特徴や文化などを比較する。異なる歴史や文化においてどのような物語が生まれ、親しまれてきたのか、また怪談が社会的にどのように捉えられてきたのかを考察する。さらに、怪奇現象が起こる場所や時間に注目し、それらがどのように恐怖と結びついているのかも探っていく。
第2章では、古代ローマにおける幽霊話や西洋の魔女、変身物語について述べる。古代ローマの怪談には、死者の霊が現れる幽霊話や、魔女が中心となる物語が多く語られている。魔女は人間を動物に変えてしまうという能力を持ち恐れられていた。ホメロスの『オデュッセイア』で語られているように変身物語として魔女の能力が示されている。この章では幽霊話や魔女の存在、古代ローマの変身物語を深く掘り下げていく。
第3章では日本の怪談を中心に妖怪や動物怪談、変身物語について考察する。日本の怪談は独特な文化から日本特有の恐怖感がありとても興味深い物語が多く存在する。この章では小泉八雲の『耳なし芳一』や泉鏡花の『高野聖』から日本の怪談の特徴を探り、恐怖の要素とはなんなのかを考えていく。ここでは暗闇や静けさという要素が怪談にもたらす恐怖などについて考えていく。他にも動物怪談から古代ローマの変身物語の比較も行う。日本と古代ローマでは変身する動物の種類も大きく異なる。日本の怪談では狐や狸、猫などの動物が頻繁に登場する。古代ローマでは狼やビーバーなど日本とは全くタイプの違う動物が登場する。この差についても触れていく。日本と古代ローマで憑物の認識と差や幽霊の概念はどのようなものなのかを考察していく。
第4章では、古代ローマと日本の怪談や変身物語の共通点と相違点を比較・考察する。時代も文化も異なるが、怪談というジャンルからどのような点で共通しているのか、どのような認識の違いが存在するのかなどを考察した。例に挙げた怪談話はどの場面が恐怖をそそるのか、恐怖を感じるポイントを抑え分析していく。非現実的である怪奇現象だが、それぞれの国に存在し今日まで語られている事実をこの論文を通して示していきたい。