行田ゼミ

三ラウンド・システム理論に基づく英語学習教材
- 映画Green Bookを素材として-

髙橋萌

 英語力を効率的に身につけたい。語学学習において、多くの人がそう考えているだろう。現代は、AI技術の発達で便利にコミュニケーションを図れるようになった一方、依然として英語におけるコミュニケーション能力の必要性が強調されている。それどころか、急速なグローバル化の進展の中で、その必要性は年々増している。
 文部科学省は、平成25年12月に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を取りまとめた。そこでは、小学生の英語学習の早期化や、小・中・高等学校の英語指導体制の強化が示された。また大学入試では、英語の4技能が測定できる検定試験活用の普及、拡大が目標とされている。
 このように、英語学習の重要性が認識されている一方で、日本人の英語力は世界的に見ても低いとされている。国際語学教育機関のEducation Firstが実施した、世界最大の英語能力指数ランキング(2023年版)では、日本は113カ国中87番目に位置している。なぜこのような事態が起こるのだろうか。私は大学の英語の授業で、三ラウンド・システム理論を知り、これまで行ってきた英語学習の問題点や、新たなアプローチの仕方に気付くことができた。そして三ラウンド・システム理論が、英語力を効率的に養成したい人にとって適していると考え、この理論に基づいた英語学習教材の作成に至った。
 三ラウンド・システム理論とは、日本の英語教育の現状改善を目的とし、竹蓋幸生千葉大学名誉教授によって開発された英語学習理論である。英語指導において重要な点は、学習者にとって実用的かつ、興味関心のある教材を使用する事である。しかし、そのような教材を採用すると、難易度が高いために学習者は絶望し、英語に対して高い壁を感じてしまう。三ラウンド・システム理論では、教材の提示法や、情報郡の工夫によって、その難易度が格段に下がる仕組みになっている。学習者は自分の力で学習を進め、楽しく学習を継続することができる。この理論は、これまでに提唱され有効だと考えられる「古典的学習理論」・「オペラント学習理論」・「認知理論」・「分散学習」などの成果が取り入れられたものである。このような「システム科学」の考え方を導入することで、効果的かつ効率的な学習が達成される。
 本論文は次のような構成となっている。第1章では、三ラウンド・システム理論の概要や教材のしくみについて、竹蓋の論文を引用しながら説明する。第2章では、教材作成の際に素材とした映画Green bookの説明をする。第3章では、三ラウンド・システム理論に基づいて作成した教材を提示する。今回作成した3種類の教材は、アメリカの生活や仕事、アイデンティティに関する会話など様々な話題が含まれており、学習者の興味関心をひくものとなっている。