銭ゼミ

SNS時代の音楽プロモーション戦略
—日中韓のアイドルとファンコミュニティを中心にー

鈴木佳歩

 本論文では、デジタル化とSNSの普及が進む現代において、多くの人々を魅了している日中韓の「アイドル」に焦点を当て、各国の文化的背景や市場特性に基づく音楽プロモーションの展開やファン文化を比較、考察する。そして、今後のSNSプロモーション戦略やファンのコミュニティ形成に与える影響を明らかにすることを目的とする。

 第1章では、日中韓の音楽市場の形成とアイドル文化の変遷を整理し、YouTube、X、TikTok、WeiboなどのSNSプロモーションを分析する。日本では、多様な音楽市場を背景にアイドル文化が早くから形成されているが、メディアの影響が強く、SNSプロモーションは発展途上である。一方、中国では日本や韓国の影響を受けつつも国内独自のSNSが主流であり、海外進出を目的とした活動は限定的だ。
韓国では、J-POPの影響も受けながらも流行に合わせてデジタル化を推進し、SNSを活用したプロモーションを確立してきた。分析を通じて日中韓のアイドルは独自に進化しつつも相互に影響を受け合う状況を明らかにする。


 第2章では、アイドルとファンの関係性に焦点を当て、ファンとアイドルの交流から生まれる影響や関係性、ファン活動の特徴とその影響を比較、考察する。日本では、SHOWROOMのような配信アプリやメッセージアプリを通じて「親近感」と「憧れ」を両立するプロモーションが普及し、柔軟な応援スタイルが形成されている。中国では、Weiboのライブ配信や「超话」と呼ばれる掲示板機能などを通じて、ファン主導の支援活動が活発であり、韓国でもファンがアイドルの成功に直接関与する「参加型」文化が発展していた。これらの分析から、SNSを介したファン活動がアイドルの人気拡大や成功に密接に関連していることを明らかにしていく。
 第3章では、デジタル化が進む中での日中韓アイドル音楽の展望を考察する。SNSプロモーションが進化し、グローバル市場への進出が加速する一方で、情報過多や誹謗中傷といった課題も浮き彫りとなっている。こうした課題に対応しつつ、各国がSNSを活用してファンとの関係を深化させ、国内外双方で市場が発展する可能性について言及する。


 SNSを活用したプロモーションは、日中韓それぞれのアイドル文化やファンの独自の市場特性を反映しつつ、他国の取り組みを吸収し、発展している。グローバルな展開に加え、国内市場にも注目し、ファンとの関係を強化することが、音楽業界における日中韓のアイドルの持続的発展に不可欠であると考える。