私の卒業論文のテーマは、日本人だからといって日本の視点から中国を見ることも、中国が好きだからといって中国の視点から日本を見ることもありません。公平で客観的な立場から両国を見つめ直し、その相互理解を深めることを目的としています。
世論調査によると、日本人の約92%、中国人の約63%が相手国に対して良くない印象を持っているという結果が出ています。この数字は、両国間に深刻な誤解や偏見が存在していることを示しています。私の研究では、これらの誤解や偏見の背景にある原因を探り、特にメディア報道と歴史教育が相互理解を妨げている点に注目しました。
例えば、日本と中国で大きく報道された「福島第一原発の処理水放出」の問題を取り上げると、日本のメディアでは処理水の安全性や科学的根拠を詳しく説明している一方、中国のメディアでは主に環境への懸念や反対意見を強調しています。このような報道の違いは、相手国への印象に大きく影響し、人々の誤解を深める要因となっています。また、歴史教育においても、各国で重視する内容や教え方が異なるため、過去の出来事に対する認識にズレが生じています。こうしたメディアや教育による情報の偏りが、固定概念を形成しているのです。
このような課題を解決する手段として、私はSNSの可能性に注目しています。SNSは匿名性があるため、個人が率直に意見を発信しやすく、また情報が短時間で広がる特性を持っています。例えば、中国の若者が日本の文化や社会についてSNSで直接日本人とやり取りすることで、メディア報道や歴史教育で植え付けられた固定概念を乗り越えることができます。逆に、日本の若者もSNSを通じて中国の実際の姿を知ることで、中国への印象を見直すきっかけを得るかもしれません。
私の研究の最終的な目標は、両国の人々が偏見や誤解にとらわれることなく、正確な情報に基づいて相手国を理解し判断できるようになることです。メディアや歴史教育が与える影響を乗り越え、SNSを活用した新しい形の交流を通じて、未来志向の日中関係を築く一助となることを願っています。