現代社会では、メディアやインターネット(以下、ネットと表記)が個人から国家に至るまで幅広い影響を与えている。特に中国と韓国は、日本の隣国として経済的・文化的に深い結びつきを持ちながら、それぞれ独自のメディア規制を展開してきた。両国は経済発展とともにメディア技術を活用する一方、規制が国民意識や国際的イメージ形成に与える影響が注目される。
本論文では、中国と韓国のメディア・ネット規制の違いと、それが文化、社会、国際関係に与える影響を明らかにすることを目的とした。先行研究では、中国では共産党政府がメディア規制を強化し、ネット監視を通じて情報統制を行い、国家の安定と経済的利益の両立を図っていると指摘されている。一方、韓国では表現の自由が保障されつつも、青少年保護や公共秩序維持を目的とした規制が行われてきた。また、日本文化への規制や文化政策が国民意識に影響を与えたことも論じられている。しかし、両国の規制の具体的内容やそれが国民に及ぼした影響、規制を比較する視点での分析は十分でない。
本論文ではこれらの課題に焦点を当て、具体例を基に両国の規制の特性と影響を比較した。中国では共産党の統制がネット上でも徹底され、政治的に敏感な情報や政府批判が厳しく検閲されている。近年ではAI技術を活用した検閲システムが導入され、安定した社会秩序の維持が図られているが、同時に個人の自由や創造性が制限されている。また、日本のポップカルチャーに触れる中国の若者たちの中には、規制に批判的な意見を持つ層も存在するが、厳しい統制のため自由な意見表明が難しい現状が明らかになった。韓国では表現の自由が保障されているが、青少年保護法などを通じて青少年を有害情報から守ることを目的とした規制が存在する。一方で、これらが過剰規制として批判されることもある。さらに、歴史的には日本文化への規制が行われてきた経緯があり、1990年代以降規制は緩和されたものの、一部では反日感情が根強く残り、文化交流の障害となるケースも見られる。
両国の規制の最大の違いは、その目的と政府の関与の程度にある。中国では政府が主導して情報統制を行い、社会の安定を優先する政策がとられているのに対し、韓国では市民の自由を重視しつつ、秩序維持のための規制が適用されている。一方で、両国に共通するのは、規制が文化や社会の価値観に深く影響を与えている点である。例えば、青少年保護や社会秩序維持という目的は両国に共通しているが、これらが時に対立や摩擦を生む原因ともなり得る。
結論として、中国と韓国のメディア・ネット規制は、それぞれの社会や文化形成に大きな影響を及ぼしている。中国では規制がナショナリズムの強化や国家の安定維持に寄与しているが、外部との文化交流を阻む要因にもなっている。一方、韓国では自由と規制のバランスをとりつつも、歴史的背景や社会の価値観が文化的摩擦を引き起こす場合がある。本論文を通して、両国の規制の在り方を再考し、情報社会における自由と統制の均衡を探るための一助となることを目指した。