留学報告会

ドイツでの生活

柳川若菜

 私は2022年の8月から2023年1月末までの約半年間、ドイツの北西部にあるミュンスターという街で暮らしていた。ミュンスターはドイツ西部のノルトライン=ウェストファーレン州に属する街である。同じ州に属しているデュッセルドルフやブレーメンなどに比べると観光地としては知名度が低い街だが、1618年に勃発した三十年戦争を終結させウェストファーレン条約を締結した場所として広く知られており、歴史的にとても重要な街である。また、人口約32万に対し大学生が約5万6千人おり、ドイツ10大大学都市に数えられている。ミュンスターは田舎と都会の要素がうまく融合しているとても住みやすい街だ。AaSeeと呼ばれる大きな湖やその周りを取り囲む公園は、ミュンスターの住民や観光客にはとても人気のスポットとなっている。大きな教会や美術館もあり、中でも一際目立つLamberti-Kircheという教会はミュンスターのシンボルとなっていて、待ち合わせスポットなどで人気の場所である。
 ドイツでは様々な季節のイベントがあり、ミュンスターでは一つ一つのイベントが街全体をあげてとても盛大に行われる。音楽を楽しんだり、伝統的な衣装を着て踊ったり、食べ物を仲間とシェアしたり。いつでもどこでも大勢の人で賑わっていた。中でもドイツ全体で盛大に行われるのがWeihnachtsmarkt(クリスマスマーケット)である。街によって様々な名物の食べ物やシンボルツリーが楽しめたり、街の名前が刻まれたコップなどのご当地お土産を買うことができる。これらのイベントでドイツ人はよくカリーヴルストやフライドポテト、プレッツェルを食べる。これらはドイツにおける3大人気ファーストフードと言っても良いほど親しまれている。これに合わせてビールを飲むのがドイツ人にとっての至高の時間である。
 もう一つ紹介しておきたいのがサッカー文化だ。ドイツは世界に誇るプロサッカーの実力を持っており、サポーターの熱量もとても高い。熱量が高すぎる故サポーター同士でけんかが怒ることも珍しくないが、会場内の一体感がものすごいのだ。私が見ているチームの日本人選手がゴールを決めた時、知らない男性達が「君も日本人か!」と話しかけてきてくれ、まるで私がゴールを決めたかのように讃えてくれた。そのように近くの知らない人とも仲良くなれるのがドイツ独特の観戦文化である。
 学校生活について、私はミュンスター大学附属のwipdafという語学学校で、月曜日から金曜日まで毎日ドイツ語を学んだ。授業は休憩を挟んで約3時間行われ、1クラス10人前後の少人数で国籍が多様な学生達と、ドイツ語でドイツ語を学ぶ。クラスメイトはトルコやカザフスタンなど、中央アジア周辺出身の人が多かったと思う。2ヶ月単位でクラスが変わるのだが、日本人は私含めて2人のことが多かった。留学当初はリスニング力も単語力もなかったため授業についていくのはとても苦労した。コツコツ文法や単語を学んだり、グループワークをしたり、PowerPointを使ってプレゼンテーションをしたりなど、様々なスタイルの授業に取り組みながらドイツ語のスキルを身につけていった。同じくらいのドイツ語レベルの学生達と意見を積極的に発言し合い、切磋琢磨しながらドイツ語を学ぶのはとても楽しかった。最初はスーパーで買い物をするのも一苦労だった私も、帰国直前では日常会話ならスムーズに交わせるようになった。
 留学生活を通じて得た自信と異文化交流の魅力に触れ、ドイツでの経験が私に新たな視点をもたらした。異なるバックグラウンドを持つ人々との交流が、自分自身を理解し、認める力を育んでくれた。日本では感じられなかった多様性と自由な発想が、私にとって貴重な経験であり、これからも大切にしたいことであると考える。