ジョンソンゼミ

ドラマでみるジェンダー比較

堀江みと

 本研究では主にアメリカのテレビドラマ作品である『ゴシップガール』(Gossip Girl)の2007年に放送が開始したオリジナル版と2021年に放送が開始したリブート版を参考に、ジェンダーの描かれ方の変化を研究していく。
 最初にオリジナル版を取り上げる。主人公であるセリーナとブレアは女性という視点から見れば反対の存在である。ステレオタイプの要素を持つセリーナと当時の進歩的な女性の特徴がみられるブレアを主人公として描くことで、転換期であることがわかる。また、性的マイノリティーの描かれ方について、主にセリーナの弟であるエリックを取り上げる。エリックはゲイであり、そのことを隠していた。しかし、セリーナの旧友により家族にばらされてしまう。その際の母の態度として、ショックを受け、ゲイであることを受け入れられないような態度を見せた。これにより性的マイノリティーが隠すべきもの、受け入れがたいものとして考える世代がまだいることがわかる。
 次にリブート版を取り上げる。リブート版の主人公であるジュリアンはインフルエンサーである。近年のアメリカでインフルエンサーや有名人がフェミニズムについて情報を発信するセレブリティフェミニズムがトレンドとなっており、そのような特徴がジュリアンにもみられる。そして、ゲイ夫婦の子どもであるマックスとその家族を見ていくことで家族の形が多様化していることがわかる。
 次に、それぞれの時代を比較していく。オリジナル版ではほとんどなかったが、リブート版では女性の登場人物たちが女性の扱われ方や、振舞い方について言及するセリフが多くみられる。また、容姿に関しても主人公が丸刈りにしているなど「自由性」が女性の間に広まったことがわかる。
 性的マイノリティーに関しては、そのようなアイデンティティーを持つアメリカ人の割合が増加していることがわかった。これにより、作品中でも多様なアイデンティティーを持つ人物が登場している。また、トランスジェンダーの役者が登場するなど二つの時代を比較することでより寛容になっていることがわかる。
 オリジナル版の登場人物たちの世代であるミレニアル世代とリブート版の登場人物たちの世代であるZ世代の特徴を比較することでも変化がみられる。この二つの世代の最大の違いであると言えるSNSの存在があらゆることに影響していることがわかる。
 次に、他のドラマ作品も参考に時代によって変化する多様性の描き方を研究していく。2000年代になりこれまで表面的にしか扱われなかった性的マイノリティーの登場人物が立体的に描かれ始めた。そして、2010年代に入ると性的マイノリティーが登場しない作品はほとんどなくなった。2020年代になると描かれ方はさらに変化した。登場人物の数だけセクシュアリティがあることが当たり前となり、より複雑となったため、セクシュアリティのラベリングがなくなった。
 本研究により、2000年代初頭と2020年代ではジェンダーの描き方が大きく変化したことがわかった。