比較文化学会 会長挨拶

比較文化学部と比較文化学会

大妻女子大学比較文化学会 会長 貫井一美

 令和5年度はコロナの5類への移行で、対面授業を主として始まりました。ポスト・コロナの初年度で全てがコロナ禍以前に戻るわけはなく、コロナ期間中の功罪を検証しつつ、新たな授業のあり方を模索する時期に入ったといえるでしょう。一週間ほど前、今年度の卒業論文が提出されました。コロナ以前は、各自が二部づつ、規定のファイルに卒論を閉じて事務部に時間厳守で提出することになっており、1分1秒でも遅れたら受領されませんでした。コロナ禍の到来で、卒論のこのような提出方法も大きく変わりオンライン提出となりました。今回、コロナが5類になったからといって卒論のこの提出方法がコロナ以前に戻ったわけではありません。事務部は各学部ごとへのオンライン提出で問題ないと判断したようです。「移動」「修正時間」という点では、学生たちにとってもオンラインが好ましいようです。また、オンライン授業の功罪もまさに賛否両論です。このようにコロナ禍後の授業形態や手続き方法などはコロナを機に大きく変化しており、これからも模索が続いていくことになるでしょう。
 比較文化学会も同様です。以前は総会、外部講師をお招きした記念講演会、卒業論文の中間報告会、その後に懇親会というプログラムでした。コロナ禍以降は外部講師によるオンライン講演会だけが行われ、学生はリアルタイムオンライン、昨年は講演会なしの中間報告だけ、もちろん懇親会も開けませんでした。時間制限や人数に留意しての開催でしたから学会を取り仕切る学術委員会の先生方のご苦労は多かったことと思います。今年度は昨年と同様、講演会は行わずに卒論の中間発表を中心にして構成され、その後コタカフェで懇親会が開かれ、通常は自分が接することが少ない先生方や発表者との活発な会話で盛会となりました。この時期は2年生たちが3年ゼミを選択する時期でもあるので、懇親会での先生や先輩とのやりとりは学生にとってゼミ選択に大いに役立ったものと思います。今年度の比較文化学会の成果を踏まえて来年度は記念講演会も復活して学生たちと外部の研究者との交流の機会が広がるようになればと考えています。比較文化学部の学生は入学と同時に全員が比較文化学会の構成委員となりますが、少し残念なのは、比較文化学会の存在意義が学生たちに十分に伝わっていない点です。学会は学部のアカデミックな側面を担っているわけですが、そのアカデミックな空気を知らずに高校生までの学習そのままに4年間を過ごす学生が多いようです。比較文化学会の存在意義を在学生が正しく理解し、大学生もまた教員と同様に研究という目的で学会に所属しているという認識を持って、比較文化学会を有意義に利用して欲しい、教員もそのためにさらなる努力をしていく必要があるのはいうまでもありません。
 また、現在は3年ゼミと4年ゼミは合同ではなく、個々にゼミが行われています。ですから先輩が卒論を仕上げていく過程を知ることができないのが現状です。私は大学は年齢や学年を越えて、共に学ぶことができる場であって欲しいと願っています。その意味で比較文化学会は、学年やコースを越えての繋がりを結ぶ場であることが望ましい。学部でできた縦糸や横糸の繋がりは、大学を離れ社会人になった時にも比較文化学部の卒業生を繋げてくれるはずです。女子大学の危機が取り沙汰される昨今、比較文化学部も例外ではありません。比較文化学会は教員と卒業生の結びつきを在校生にまで繋げて行けるような関係性を構築し、社会に出ていった学生たちが「比較文化」という学問の有用性を認識できるよう、アカデミックな側面を担う場でありたいと思います。そしてそのアカデミックな環境の中で自らの興味を広げてユニークで自由な学びを実践していくことを願っています。