江頭ゼミ

MBTI 診断による男女の会話分析

西塚真子

 1990年代にアメリカの社会言語学者のTannenが、男女の会話スタイルについて分析をし、女性の会話スタイルはRapport Talkによって、男性の会話スタイルはReport Talkによって特徴づけられるという分析を提示した。
 このタネンの主張が、現代の日本人の男女の会話の中にどの程度見出すことが出来るかを確かめるために、身近な男女の会話を収集し分析を行った。その結果、タネンの分析と一致、不一致が観察された。タネンの主張との不一致点として、男女の会話において、男性が女性の、女性が男性の会話スタイルを取ることが挙げられる。
 これについては、ユングの心理学的タイプ論に基づく、MBTI診断によって説明できる。ユングの提唱したタイプ論とは、個人の気質がどの方向に向きやすいのかを質問形式で、4文字で表される4つの要素で示しており、その態度に応じて人の行動や性格特性が決まるというものである。その結果、タイプ別に外向型、感情機能、直観機能が男女の会話スタイルに重要な要素であることが示唆された。
 タネン分析の一致点としては、発話者は“F₌感情機能”が共通して観察された。感情機能を志向する人は、相手の気持ちを重視し相手に寄り添うコミュニケーションスタイルをとり、自身の気持ちを伝え、相手の気持ちを理解しようとする前向きな発話が多いと結論付けられる。これはタネンの提唱するRapport Talkをとる女性の会話スタイルとReport Talkをとる男性の会話スタイルにつながる。一方、タネン分析と不一致点として、発話者は“E=外向型”“N=直観機能”に多く属していた。EやNに属している会話スタイルは、周囲の人と積極的にかかわりを保ち、アイディアを生み出す機会をつくることに長けている。自身の分析では、女性が競合的な男性の会話スタイルをとる場面が多く見受けられた。このことは、女性は会話のさらなる発展を望み、情報やアイディアを新たに共有しようとする、MBTI診断のEやNのコミュニケーションスタイルをとっていたためと結論付けられる。
 以上のような結論が導き出されたが、この結論が必ずしも支持されるとは限らない。なぜならば男女の会話スタイルは、時の流れの中でまたは社会状況によって変化を受けると考えられるからである。これから10年後男女の会話スタイルがどのようになっているかは予測がつかない。これを考えると、10年後もう一度同様の研究を行うことは価値があることで、新たな発見へとつながる可能性があると思われる。