卒業論文中間発表感想

松濱朱里さんの報告「日本における外国人女性のSRHR(性と生殖に関する権利)—技能実習生の乳児遺棄事件を通して」を聞いて

南雲毬名

 松濱さんは、技能実習生の乳児遺棄事件のニュースを目にし、またそのような事件が後を絶たないことに問題意識を持ち、日本における外国人女性のSRHRと技能実習制度について検討を行いました。
 日本に来る技能実習生の多くを占めるベトナム人たちは、日本に来る前に多額の借金を背負わされていると知り、衝撃を受けました。多額の借金を背負わせてから日本に渡航させることで、日本で何か問題が起きても帰りづらくさせているというのは、技能実習生たちの人権を無視した行為だと思います。そのような背景を知りながら継続させてきた政府や企業にも問題があると思います。
 また、多くの技能実習生たちは妊娠したら帰国させられると思い込んでいて、それが乳児遺棄事件に繋がっていると分かりました。私自身も、乳児遺棄事件が起こる背景には技能実習生は妊娠することが禁止されているからだと思っていました。しかし、実際は妊娠などを理由に解雇するなどの不利益な扱いは法律で禁止されていることを松濱さんの発表で初めて知りました。このような法律は、技能実習生自身はもちろん、日本人にも知られていないのだと思います。また、法律で禁止されているのにも関わらず、妊娠すると日本企業から帰国させられたという技能実習生も多くいることも事実であると知り、日本企業にとって技能実習生たちは都合のいい労働力にすぎないのだとショックを受けました。そのような企業活動自体に問題があり、企業の在り方や日本の雇用制度から見直す必要があると思いました。
 2019年以降には技能実習生に配布される技能実習手帳に、「技能実習中に結婚・妊娠・出産した場合」という項目を追加し、また技能実習生の募集・受け入れ・監査などを行う監査団体や受け入れ企業に対しても技能実習生の妊娠などの権利に関する周知が行われていますが、とても十分であるとは思えません。いまだに技能実習生の乳児遺棄事件は起きているし、そのことに関する社会的な関心も薄いと感じます。また、そのような事件が報道されると、出産した女性ばかりが非難を受け、相手の男性やそのような状況に追い込んだ制度や機関についての批判は少ないです。本質的な部分から目をそらし、技能実習中に妊娠するなんてふしだらな女だとレッテルを張ってSRHRを軽視することは、日本におけるすべての女性のSRHRが軽視されてきた歴史によるものなのかなと考えました。
 少子高齢化が進む日本社会において労働者不足は深刻な問題です。しかし、目先の労働力不足を解決するためだけの技能実習制度は、長期的には日本の首を絞めることになります。今後は、日本における外国人労働者の権利保護や、技能実習制度自体の是非も含めて改革が必要だと感じました。