卒業論文中間発表概要

日本人の韓国・朝鮮観

飯尾美月

 発表では、最初に卒業論文のテーマを選んだ理由について、現代において日韓では文化交流が深まる一方、両国間の国際問題がメディアによって強調され、正確な相互理解に至っていないため、国際問題が起こる以前の日本人は朝鮮・朝鮮人をどのように見ていたのかを研究するに思い至ったことを紹介した。日朝関係が比較的安定していたとされる近世に焦点を当て、自分自身と同じ身分である「民衆」を軸に探究することを述べた。
 続いて、第一章で異国人及び朝鮮人が登場する浄瑠璃・歌舞伎作品、第二章では日朝間で起きた漂流事件について取り上げ、近世における民衆の朝鮮・朝鮮人観について二方面から検討していくことを説明した。
 第一章の浄瑠璃・歌舞伎作品について、五つの作品を取り上げた。作品に登場する歴史のモチーフが神功皇后の三韓征伐や秀吉の朝鮮侵略など、作品によって異なることを述べた。また、登場する異国人のルーツについて、父が異国人で母が日本人である場合や、異国生まれが日本人に成り代わる場合など、異国人の設定がそれぞれ異なることを述べ、作品によって異国・異国人の描かれ方が様々であることを紹介した。
 第二章の漂流事件について、実際に日本人と朝鮮人が接触した二つの漂流事件を取り上げた。一つ目の岡山から朝鮮への漂流について、地図を提示して漂流のルートを説明しながら、漂流先で日本人と朝鮮人が朝鮮通信使を通じてお互いに認識を持っていたことから友好的な交流があったことを紹介した。二つ目の朝鮮から鳥取への漂流について、実際に朝鮮人が残した謝恩状の内容を紹介し、その内容から鳥取の人々が懇切に朝鮮漂流民を対応していたことを紹介した。
 最後に第一章で浄瑠璃・歌舞伎作品に登場する異国・異国人像と第二章で実際に朝鮮人と接触した日本人が抱いた朝鮮人のイメージに差異が見られることを指摘し、年代や地域ごとに民衆の朝鮮・朝鮮人観を考察していくなど今後の展望について述べた。
 学生や先生方からも有意義な質問やコメントを多く頂いたことに感謝を申し上げたい。