高田ゼミ

日米のLGBT権利擁護活動 ―同性婚実現から読み取る日本の課題―

加藤碧梨

 本論の目的は、日米のLGBTの権利擁護活動を辿り、時代ごとに人々の性的マイノリティの人々への理解と社会的な動向を考察することである。まずは、何世紀にもわたって語られるアメリカ合衆国の性的マイノリティの歴史を考察したうえで、同性婚実現までの国内状況の変容をみていく。そして最後に、アメリカの同性婚実現から読み取る、日本における残された課題を明らかにすることが目的である。
 第1章第1節では、ストーンウォール事件がその後のアメリカに残した影響について述べていく。ストーンウォール事件をスタートとして、本研究を進めていく理由は、アメリカのLGBTコミュニティの運命や歴史を大きく変えたことで知られる出来事だったと現世でも語られるほどだからである。この事件をきっかけに、各地で行われていく運動や組織について触れることで、同性愛者たちの社会に立ち向かう傾向について考察していく。
 第2節では、ストーンウォール事件が起きた1960年代から1970年代の当時の国内理解について明らかにしていく。国民感情の中に同性愛者がどのように位置づけられていたのかを考察し、どのような差別に苦しんできた歴史があるのかを概観する。さらに、その国民感情を左右させたアメリカ社会や政府の動向にも目を向け考察する。
 第3節では、1980年代にアメリカの歴史で語られる一番の出来事と言える、「AIDS危機」について論じる。世界中を巻き込んだAIDSだが、アメリカ国内ではゲイの人々に対する差別がさらに勢いを増していく出来事となってしまう。その中で、彼らが社会とさらなる闘いを展開していく様子を概観していく。
 第2章ではアメリカの同性婚実現までの歴史を扱う。第1節は、バラク・オバマ大統領が就任したことで多様な性の在り方を推奨する時代が訪れる。今まで、同性愛者を指示することが大統領選挙の争点になってきたが、そんな国内状況の中で、オバマ大統領がLGBTコミュニティに与えた様々な希望について論じる。
 第2節では、2003年から2004年の一年間、転換期とされる時期に焦点を当て、同性婚実現がアメリカにもたらすものは何か考察する。結婚の価値観、人々が考える結婚とは何かを明らかにすることで、賛成派と反対派の二極化するアメリカを読み解く。
 第3節では、全米で同性婚が認められるまでの裁判の事例を用いる。「同性婚合法化」という目標に到達するまで、沢山の裁判が行われてきたことは事実である。国レベルでの動きがどのような影響を与えたのか、比較的早い段階から激しい運動が行われていた州を中心に考察する。
 第3章では、これまでのアメリカの性的マイノリティの歴史を考察したことを踏まえ、日本について述べていく。第1節は、日本におけるLGBT政策がどのように行われているのかを整理していく。まだ、同性婚が認められていない国として挙げられる日本だが、その中でどのような動きがあるのかを考察する。第2節では、日本に暮らす性的マイノリティの人々がどのような未来を望んでいるのかを考察していく。比較的新しい事象を取り上げることで、今の日本が抱える課題を明らかにしていく。