卒業論文中間発表概要

「旅文化の比較~古代ギリシャ・ローマと江戸時代日本~」

竹内舞衣

 卒業論文では、現代西洋文化の“原点”「古代ギリシャ・ローマ」と庶民文化が発展した“原点”「江戸時代日本」を取り上げ、好奇心旺盛な姿と陸路の旅を中心に旅文化の比較を行う。
 今回の発表では、①旅の持ち物と形式、②宿泊事情、③旅の食事とおもてなし文化を取り上げ、筆者の旅行経験と絡めながら、旅に必要な要素や現代に継承されている点を考察した。旅がテーマということで、最初に筆者が実際に訪れた土地の景色を共有し、神秘的な空気を皆さんに体感して頂いた。次に、旅の持ち物と形式では両時代の特徴を図表で整理し、個性溢れる工夫を提示した。宿泊環境から衛生用品が必須である点や旅の思い出を記録する姿、荷物のまとめ方など、所持品が旅の快適さを向上させることが言える。
 続いて、宿泊事情と食事の様子では、両時代で豪勢なもてなしを受ける富裕層や下級な宿屋で夜を明かす庶民層に着目した。日本では異文化の誰かを招待する事例は少なく、どの身分も宿泊施設を利用するのが定番だが、西洋の富裕層は自宅に客間が併設されていることが多く、宿屋は下級な旅を意味する。旅人達は食事や会話を通してもてなされ、現地の人々との交流を楽しんでいる姿が多く見られた。さらに、旅人を受け入れる側も同じ土地にいながら非日常を楽しめることが言える。筆者自身も3年次演習のウィーン滞在でアパートでの宿泊を経験したが、現代西洋文化にも古代富裕層のおもてなし文化の痕跡を感じられた。また、4年次に訪れた三重県伊勢市では、江戸時代に開化した食べ歩き文化が継承されており、今日も賑わっている。このように、全く異なる文化の“原点”が現代の旅文化にも活かされており、「旅」という非日常があるからこそ、生きる活力となり心身共に豊かに過ごせる。今後の研究予定では旅みやげの文化を取り上げ、神秘的な旅の思い出をどのような形で持ち帰るかを考察する。
 最後に、昨年度は実行委員として参加していた私が、先輩方と同じ場所に登壇させて頂けるなんて夢にも思わなかった。発表を練る中で感想や疑問を積極的に抱いてくれたり、伝えたいことの言語化を助けて頂いたりと、渡邉先生と仲間のお力添えのおかげで名もなき旅人達に寄り添うことができた。人生に一度の大学生活で、貴重な経験をさせて頂いたことに心から感謝を申し上げたい。旅文化は異なる地域や時代に着眼点を置いても興味深いテーマなので、聞いてくださった皆様の視野を広げる手助けになれたら幸いである。