佐藤円ゼミ

長岐真悠子

 私たちのゼミでは、「人種」や「民族」をめぐる様々な問題に焦点を当て、それらがどのような価値観・風土に基づいて生まれるのか、なぜそれらの問題が生じ、今も根強く残っているのかについて、佐藤先生が用意してくださった教材と、それに関連する映像を用いて学んでいます。
 前期には、スチュアート ヘンリ著『民族幻想論-あいまいな民族、つくられた人種』を用い、「人種」「民族」の概念とはそもそも何なのか、その概念が作り出されたことで生まれる問題点や矛盾点について考え、議論しました。ゼミ生10人で各章の担当者をそれぞれ決め、その担当者は事前にレジュメを準備し、先生の代わりに授業をします。各担当者は、レジュメで、その章の内容を要約することに加えて、ゼミで議論したい問題を章からピックアップしたり、取り上げられた問題に関する映画や他の事例を紹介したりなど、意欲的に取り組んできました。特に、私たちと接点のある身近なものと、取り上げられた問題を掛け合わせて考えると、より内容理解が深まりました。例えば、「民族」問題では、今まで使ってきた高校世界史の教科書における「民族」の表記の仕方(〇〇人、〇〇族、〇〇民族など)を確認し、「民族」に対する無意識の固定観念を考察しました。「人種」問題では、日本と他国の化粧品ファンデーションの色のバリエーションの違いを見て、日本人の好む肌の色はなぜ明るいのか、無意識に白人に憧れているのか、などについて議論をしました。このように取り組むことで、一見、海外の「民族」「人種」問題について言及している内容であっても、それは対岸の火事ではなく、実は私たちが暮らす日本でも身近に起きているのだということに何度も気づかされました。
 また、後期の前半には、『青い目と茶色い目』という、ジェーン・エリオット先生のアメリカの小学校での実験授業の映像を視聴しました。その映像でエリオット先生は、クラスを青い目の生徒と茶色い目の生徒の二つに分け、各グループに優劣をつけて生徒たちに学校生活を送らせ、そこから生まれる生徒たちの固定観念について観察していました。その映像を見たことで、前期に議論してきた「民族」「人種」問題における差別はどのようにして生まれるのかという問題がより鮮明に分かるようになりました。
 このように学んできたことを踏まえて、後期の後半では、各ゼミ生が取り組みたい卒業論文のテーマを発表しました。ゼミで学んできた内容と自分がどう関わっているのか、どのような共通点があるのかをよく考えてテーマを決め、佐藤先生からアドバイスを頂いたり、ゼミ生同士で卒論内容に関して質問をし合ったりすることで、自分だけでは気づかなかったテーマに対しての新たな視点を発見し、より深みのある卒論を発展させていくことができそうです。「アイヌ民族」「日本人の宗教観」「現代社会の女性問題」「LGBTQ問題」「現代の教育格差」など、テーマは様々ですが、どれも今までのゼミ内で議論してきた問題に関わる内容です。
 私たちのゼミでは、主に「民族」「人種」問題について議論をしてきましたが、それと同じ構図の問題、例えば日本のジェンダー問題などについても議論を重ねてきました。女子大の学生としての視点から考え、意見を共有することで、何気ない日常生活の中でも新たな発見がたくさんあります。また、佐藤先生は、豊富な知識と実体験を通して、様々な事例を紹介していただき、私たちゼミ生が気づいていなかった問題も取り上げてくださるので、私たちの考える「当たり前」とは何か、一度立ち止まって、考え直すきっかけをたくさん得ることができます。今後もゼミ生と切磋琢磨しながら卒論執筆に向けて、「当たり前」を疑い、多角的に物事を見る力を養いたいと思います。