教員国外研修報告/2020年度国外研修報告

渡邉顕彦

 2020年度は在外研究でウィーンに行くことになっていましたが、感染症対策で予定は大幅に変わりました。ただ夏になってから遅れて渡航し、2021年2月半ばまで、半年余りの現地滞在と研究が出来ましたのでこのことを中心に以下書かせていただきます。
 2020年春はなかなか難しい状況にあったのですが、オーストリアやドイツで直接会って相談したい専門家やこれら2国にある一次・二次史料で研究上どうしても見る必要があるものがあったので初夏に決心し、渡航することにしました。夏の始めにヨーロッパの状況はかなり落ち着いていたのですが、国際線の飛行機はガラガラでウィーン中心部も通常のように人が溢れておらず、実に不思議な光景でした。
 在外研究の目的としてはドイツの2都市にある一次資料を実際に手に取って調査することが最上位であったので、現地の方々のアドバイスもいただいて感染が収まっている間に行くことにしましたが、ドイツに入国した次の日、早くもウィーンが感染のレッドゾーンになったと新聞の一面に載っていたのには驚かされました。念のためドイツでも、また後にオーストリアでも何回かPCRや抗原検査を受けましたが、紆余曲折はありつつもドイツの調査は無事に終わりウィーンに戻ることができました。
 この時ドイツで調査した一次史料、特にコブレンツにある1625年に上演された日本を扱ったラテン語劇の手稿を実際見られたことは大きな成果でした。この手稿は電子画像をかなり前に入手し調査していましたが、おそらく当時数人の人々が何回にもわたって分担し書き直したバラバラの草稿を集めたものなので、内容の前後や極小の書き込みなど、現物を目で見、手で触らないとと分からない部分が多々あり、夏の現地調査で得られた生データはその後1年ほどかけて様々な角度から、また他研究者の方々のアドバイスもいただいて研究を続行するための材料になりました。
 ウィーンに戻り、秋になってくると感染者数がどんどん増え規制も厳しくなり、所属先のオーストリア科学アカデミーやウィーン大学図書館、オーストリア国立図書館などにたまに行けたものの、ほとんど毎日下宿先で蟄居する生活になりました。しかし元々私が社交的な性格でないこともあり、大学院生に戻ったような気分で散歩と近所のスーパーでの買い物以外に出歩かず冬籠りして過ごしたことも今となってはいい思い出です。ちなみに半年余りの一人生活に味をしめ、日本に帰ってきてからも時々当時やっていた方法で料理するのですが、私がウィーンで独自開発したレシピを家族の誰も食べてくれないのが悲しいところです。
 渡航や滞在にあたってはオーストリア科学アカデミーやオーストリア国際教育研究機構ほか様々な現地の方々に大変お世話になりました。また大妻学内や日本の関係する方々に様々な助言やご手配をいただきまたご面倒もおかけしました。予想していなかった多々の困難がある時期でしたが国外研修ができましたことを関係の皆様方に心から感謝いたします。