比較文化学会 会長挨拶

令和3年度大妻比較文化学会総会の中止と遠隔講演会の実施について

大妻女子大学比較文化学会 会長 佐藤円

 秋に入っても新型コロナウイルス感染症の流行が終息しておらず、大学における対面授業も再開される前であったため、大人数による集会を開くことは感染症対策の観点から時期尚早と判断し、10月16日(土)に予定していた大妻女子大学比較文化学会の総会は今年度も対面形式での実施を見送ることとしました。大妻女子大学比較文化学会は、その会則にもある通り、比較文化学部における研究の振興および教員と学生の相互親睦を図ることを目的とした学会です。そのためにこれまでも毎年秋に教員と学生の学会委員が協力しながら総会を開催し、その年度の活動報告と次年度の活動計画案の審議と承認、さらに学会の予算・決算の審議と承認を行ってきました。しかし昨年来の新型コロナウイルス感染症の流行により、2年続けて総会が開催できないという事態に陥りました。これら総会で諮らなければいけない議事については、今年度も昨年と同様にオンライン上での意見聴取と承認手続きを行いました。
 他方毎年総会と同時に開催している記念講演会については、やはり対面での実施はできないとの判断をしましたが、今年度も昨年と同様にオンラインを使った遠隔講演会の形式で、総会が開催される予定であった10月16日に実施しました。講師には、スペイン史がご専門の流通経済大学名誉教授関哲行先生をお招きして、「中近世スペインのユダヤ人とコンベルソ(改宗ユダヤ人)」と題してお話しをしていただきました。スペインは中世の間、長らくイスラム教徒の支配下にあり、その間ユダヤ教徒はイスラム教徒との共生を許されてきました。しかし15世紀以降レコンキスタによってスペインが再度キリスト教化すると、ユダヤ人はキリスト教徒から迫害を受けるようになり、その多くがスペインから追放されました。彼らはセファルディムと呼ばれ、ヨーロッパ各地ばかりでなく、アジアやアメリカまで離散しました。その一方で、スペインに留まることを選んだユダヤ教徒は、キリスト教に改宗することで「コンベルソ」と呼ばれるようになりましたが、キリスト教徒支配下で行われた異端審問ではしばしば「偽装改宗」を疑われ、追求と処罰の対象ともなりました。関先生は、スペインの歴史のなかで活躍をした人々のなかにいかに多くのコンベルソ、あるいはコンベルソと思われる人々がいたのかについて紹介して下さり、異なる宗教や文化が共生することの難しさと可能性について、長時間にわたり熱く語って下さいました。本来このような興味深く熱のこもったお話を伺った後に、学生との意見交換をすることこそが比較文化学会の醍醐味ですが、残念ながら今年度はオンラインによる配信でしたので、それはかないませんでした。来年度こそ、そのような比較文化学会となることを比較文化学会長として切に願っているところです。