石川ゼミ

日本の学生服の変遷と特色――服装における性差に焦点をあてて――

満川真衣

 本稿の目的は、学生服における歴史の変遷を追いながら、学生服の持つ特色と役割を明らかにするとともに、服装が性別区別にもたらす影響について考察することである。
 第1章の第1節では服装がジェンダーの象徴となる経緯を明らかにした。元々は男女の区別がなかった服装は、男性が活発に行動する戦争や余暇のために、機能性を重視したスタイルを求めたことから性別差が生まれた。第2節ではファッションにおける“らしさ”を考察した。服装が進化を遂げていく中で、男性は働くことを重視したスタイルに、女性はおしゃれを楽しむことが定着し、それぞれの“らしさ”が植えつけられていった。第3節では性別差を超えたファッションの実例を挙げた。“男性らしさ”“女性らしさ”を重視する社会の中で、日本では「フェミ男」や「ジェンダーレス男子」といった中性的な存在が生まれた。女性においても、ココシャネルが生み出したツイードスーツや女性のパンツスタイルは、当時の環境では性別を超えたファッションと言える。これらのおしゃれを楽しむ人々は、服装に性別など関係なく“自分らしさ”を楽しんでいると言える。
 第2章の第1節では、服装の中でも特に性別差のある学生服の定義と必要性について考察した。制服は集団の性格を表す機能を持ち、役割や階級を明示する役割を持つ。学生服は集団意識や規則を守るための機能を持ち、アンケート調査の約9割が集団意識の中で規律や平等を求めるといった理由から必要であると回答した。学生服は洋服とほぼ同時期に日本へ導入され、特に女子生徒の制服は、40年ほどの歳月をかけ定着した。第2節の大正時代の制服については、西洋のアイテムが好まれ、セーラー服が普及した。関東大震災の影響から女子体操教育が見直され、和装から洋装へと移り変わった。第3節の昭和時代の制服については、戦時中は国民服やモンペが制服の役割を持ち、戦後復興とともに制服が復活した。80年代には変形学生服が流行しデザインを重視する制服も増えた。第4節の平成時代の制服については、ブレザースタイルの流行とともに社会規範の緩みやゆとり教育の影響から、着崩しスタイルが流行した。制服市場ではファッション性が重視され、制服は多様化の時代となった。
 第3章の第1節では制服に関するアンケートを行い、着用状況や役割について個人の考えを調査した。多くの人が学校指定の制服を着用しており、制服の役割を学校に所属している証明、集団意識と捉えていることが明らかとなった。一方で個性や自由を求める声も多くいた。ジェンダーレス制服について採用していた学校は少なく、母校で採用されていても女性のスラックスのみという回答のみであった。第2節では実際にジェンダーレス制服を採用している学校を取り上げ、実態を明らかにした。ジェンダーレス制服を採用した学校では、誰もが着やすい環境を作ることが課題であると考察した。
 結論として、服装が性別区別に与える影響は大きいが、性別に関わらず自分らしさを表現できる環境は少しずつ生まれており、多様化する社会に順応する価値観を持つことが大切ではないかと考察した。