江頭ゼミ

2021年における男女の会話スタイル研究 – タネン理論の地位と意義 –

路川舞衣

 1990年、アメリカの社会言語学者であるDeborah Tannenは、会話の分析を行った。以後約31年の年月が経過している。そのような中、世の中は大きな変化を遂げている。例えば目覚ましい女性の社会進出を変化の一つであろう。となると当然女性の話し方,さらには男性の話し方に変化があってもおかしくない。
 そこで、2021年における男女別会話スタイルについて分析を行った。加えて、30年前にTannenが提唱した会話スタイルの地位と意義について検討した。
 “You just don’t Understand”(『分かりあえない理由』)において、Tannenは「類似性」や「共通体験」を示すことにより、「和合」を築こうとする女性の会話スタイルを「ラポートトーク(rapport talk)」、「知識」や「技術」を誇示することにより、「地位」を築こうとする男性の会話スタイルを「レポートトーク(report talk)」とした。そして、“Talking from 9 to 5(『どうして男は、そんな言い方 なんで女は、あんな話し方―男と女の会話スタイル9 TO 5―』)では、会話スタイルを男女別にさらに6つに細分化した。女性は「『親和』を築こうする」「対等を重んじる」「相手や周囲と同質性を強調する」「協調的・平和的な姿勢をとる」「感情を重視する」「間接的な表現を使う」会話スタイルを、男性は「『地位』を築こうとする」「上下や優劣を競う」「自らの独自性を強調する」「対立的・攻撃的な姿勢をとる」「情報を重視する」「直接的な表現を使う」会話スタイルを用いるとしている。
 では、Tannenが主張する会話スタイルは、現在においても使われているのだろうか。そこで、日本における2021年の男女別会話を調査するために会話の録音を実施した。結果、男性よりも女性の会話スタイルに変化が多く見られた。この原因として、女性の社会進出、SNSの普及といった外部的要因と、脳が好感度であり変化に対応しやすい、加えてマルチタスク向きであり、複数の会話スタイルを有することが可能である女性の脳構造といった内部的要因が挙げられた。
 また、1つ1つの会話スタイルの変化を見ていくと、発言者の脳構造が会話に大きな影響を与えていることが分かった。女性であっても男性脳を持ち合わせていれば、男性の会話スタイルを見せ、一方で男性であっても女性脳を持ち合わせていれば、女性の会話スタイルを見せるということである。
 この研究により、Tannenの会話スタイルは判別方法を変えるべきだと結論付けた。会話分析の際、Tannenは、身体的な面で男女を類別していたが、現在では脳構造の観点から男女を類別すべきである。しかし、類別方法に変化が見られたものの、Tannenの会話スタイルは、2021年の男女別会話スタイル研究の基盤となっているのも事実である。
 10年後、会話を取り巻く環境はさらに変化を遂げるだろう。その際、タネンの会話スタイルの地位と意義はさらなる変化を遂げていると推測できる。今後も、会話に注目し分析を行っていきたい。