久保ゼミ

日本に住む外国人児童生徒に対する日本語教育の実情

佐藤花香

 本論文では、外国人労働者の子どもや外国にルーツのある子どもに焦点をあて、公式に移民政策がない日本で各自治体がどのような言語教育や対策をとっているのかを考察した。移民政策がない日本で、自治体ごとの格差や国策の不十分さを明らかにしたうえで、今後増加していく外国人労働者が過ごしやすくなるためにはどのようにすればよいかを論じた。
 第1章では移民の定義と日本での外国人労働者の推移や内訳、外国人労働者の日本語能力と学習内容、日本語教育の目的について論じた。これらの点から、現在の日本の外国人労働者数がおかれている状況を明らかにした。
 第2章では、外国にルーツのある子どもたちへの対応について、学校の対応、文部科学省の通知文などの公的側面から明らかにした。学校の対応として高校入試での支援等の地域差はあるものの、これまでの経験や文部科学省からの通知や法整備によって、以前に比べ学びやすい環境が整えられつつあることが明らかになった。
 第3章では、各自治体が取り組んでいる言語教育と対策について、具体例を挙げて明らかにした。ここでは、筆者が外国人児童生徒の数が多い上位 10 位を文部科学省の資料をもとに計算し、中部地方から愛知県と三重県を、近畿地方から大阪府を、関東地方から群馬県と神奈川県を抽出した。これら5つの都道府県を対象に地域や自治体ごとの特徴と格差について比較した。共通点として資金不足の問題、人手不足の問題、各自治体の取り組み内容の相違が挙げられた。また評価できる点は、移民政策がない日本で、各自治体では試行錯誤を重ねつつ教育が実施されている点である。
 第4章では、これまで明らかにしたことをまとめ、それらが外国にルーツのある子どもたちにどのような影響を与えているのかについて考察した。まず、第3章で明らかとなった3つの共通点は連鎖していると考えられる。資金に余裕のある地域では人手を増やすことができるが、そうでない地域ではそれは難しい。それが最終的に教育の差に繋がり、学力差に繋がると考えられる。しかし、このように厳しい状況でも、各自治体では試行錯誤を重ね、子どもたちに対して少しでも質の良い教育を届けようとしていることが取り組みを見ていくなかで明らかとなった。
 こうした自治体での取り組みが今後広がり、様々な教育実践が各地から生まれ、より多くの外国人児童生徒が公平かつ平等に適切な教育を受けられるようになれば、今後一緒に日本を作り上げていく仲間たちが過ごしやすくなる環境づくりに繋がると考えられる。