オーストラリア語学研修を終えて

野崎ゆり恵

 大学二年の終わり、語学研修のためオーストラリアのメルボルンに滞在しました。オーストラリアでのホームステイは高校生の頃に一度経験しており、その時は自身の幼稚さや言葉の壁にぶつかった悔しい体験ばかりでした。今回の留学はそのリベンジとして、英語力の向上と共に積極的な挑戦とコミュニケーションを目標に約一ヶ月半を過ごしました。
 滞在期間は2020年の2月から3月半ばまで、コロナの感染が中国で流行り始めている頃ではありましたが、マスク着用義務があったのは空港のみで、現地では普段の生活を支障なく送ることが出来ました。
 モナシュ大学の授業内容は語学研修のプログラムだったので、学生の国籍も様々でした。日本人を中心にアジアやアラビア語圏の学生たちが参加し、PCを学習媒体として発表やテキストを進めていきました。最初は同じ国籍同士で固まっていましたが、数日経つとそれぞれが打ち解け、休み時間に互いの母国語を教えあったり、気が付けば授業後に皆で夜ご飯を食べに行くほど仲が深まりました。
 ホームステイ先は、とても日本文化が大好きなご家族でした。末の息子さんは特に日本のキャラクターが大好きだったので、イラストを描いてお渡ししました。その時の嬉しそうな笑顔は今でも忘れられません。高校生の頃は人見知りな性格ゆえに自分から話しかける勇気を持てずにいましたが、特技を通じて親睦を深められたこの経験は、コミュニケーションの自信に繋がったと実感しています。また、食のレパートリーが豊富で、マザーの故郷であるレバノンの料理やインドカレーなどで使用されている、日本ではあまり見慣れない材料をその都度教えていただきました。旅行感覚はあまりなく、平穏で充実した学生生活を送られたのはとても貴重な体験でした。
 留学期間の半ばごろ、ホストマザーからスーパーの棚にトイレットペーパーがなくなったと聞いてから、徐々にコロナの影響を感じ始めました。3月にオーストラリア国内での感染が複数報告されると、ロックダウン寸前の状況に陥り、本来行きと同様トランジットの予定でしたが、急遽直行便に変更されました。最終日の移動中、同じクラスにいた仲間が沢山のマスクを抱えていました。それは、マスク不足の日本に帰る私たちにと、中国人のクラスメイトが分けてくれたものでした。ヨーロッパを中心にアジア人差別のニュースが取り上げられていた時期、互いに不安な状況下でいただいた親切で、とても嬉しかったです。
 コロナ禍が深刻化する直前のタイミングではありましたが、あの時期だったからこその経験も含め、本当に素晴らしい時間を過ごしました。私にとってこの留学は、英語力だけでなく人との関わり合いや自身の精神面においても、向上心を持って生きていく大切さに改めて気付くきっかけとなりました。卒業後も挑戦意識を忘れず、一人の人間として精進していきたいと思います。