男女の会話スタイルがすれ違う理由について

児玉夏澄

江頭ゼミ

 人が言葉を用いてコミュニケーションを行う際,必ずしもコミュニケーションがうまくいくとは限らない。時には発話者の意図が会話相手に伝わらずに,トラブルになったりすることもある。対話が同性同士,異性同士であってもこのことは起こりうる。なぜこのようなことが起こるのか?一つの可能性は女性と男性の会話スタイルの違いが考えられる。この論文は,男女の会話スタイルを検証し男女の会話スタイルの違いを明確にすることを目標にする。男女の会話の分析にあたり,分析の基盤にするのがTannenの “You just don’t Understand” (『分かり合えない理由』)と “Talking from 9 to 5” (『どうして男は、そんな言い方 なんで女は、あんな話し方』)である。Tannenは前者の研究で,女性そして男性の会話スタイルはそれぞれ「ラポートーク(rapport talk)」「レポートトーク(report talk)」 と分析し,後者の研究でこれらの会話スタイルを6つのカテゴリーに細分化している。このTannenの提唱する男女の会話スタイルが会話データの分析の枠組みとなる。実際に分析するデータは自身の日常生活で交わされる会話を収集したものである。その内訳は,年齢差のある男女の対話,年齢差のない男女の対話,年齢差のない女性同士の対話である。これらの対話を記述し,Tannenの会話分析に従って分析していった。まずTannenの会話分析に一致する部分と,一致しない部分をあぶりだした。結果はほぼTannenの会話分析と一致する会話スタイルが観察された。しかし,少数であるがTannenの会話分析と一致しない会話スタイルが観察された。その1点を取り上げると,「男性が女性の会話スタイル」を示した点である。なぜ男性が女性の会話スタイルをとるのか。本論文では「恒常心」に基づく「見せかけの謙虚さ」と「本物の謙虚さ」に基づいた説明を試みた。この考えによると,男性が物腰の柔らかくなったことに加え,相手に柔らかい印象を与えたいと考える傾向が大きくなったため,女性の会話スタイルを示す様になっているという結論を導き出した。