子育てをめぐる現状と環境―子育てのしやすい社会へ―

岡村みすず

ジョンソンゼミ

 現代日本社会には、さまざまな問題がある。例えば、所得格差や老人介護、少子高齢化の進行、昨今の新型コロナウイルスのパンデミックによる社会の混乱や急速な変化など、挙げればきりがないほどである。特にこれらの中でも、本論文では大学を卒業した後に自分自身が経験する可能性のある、育児・子育てについて取り上げる。現代の日本では、諸外国に比べ子育てをするにあたり十分な環境が整っておらず、満足して子育てをできる環境であるとはいえない。その結果として子どもの減少の実情や少子化社会が進んでいるのである。本論文では、現代の子育てにおける実情や問題点をデータから洗い出し、どのように、その問題点や課題に向き合い乗り越えていけばよいかを考察していく。
 現在の日本は子どもの出生率が年々連続して低下しており、少子化社会が急速に進んでいる。近年は、未婚化や晩婚化の進行、結婚しても自らの意思で子どもを産まない選択をする夫婦も増加傾向にある。さらに、女性自身の生き方が多様化したことから働く女性も増加している。しかしながら、性別を問わず社会で活躍するようになった時代に未だ仕事と子育ての両立を支える十分な環境整備が追いついていないのが現状である。重ねて経済的な理由により、子どもをもたないあるいはもてない(子どもをもつことを望んではいるが経済的な理由で現実的に育てられず諦める)という声も多くある。日本の少子化問題はさまざまな要因の一つ一つが複雑に絡み合っているために、少子化の速度を緩め、問題の解決へは時間を要するのではないか。現代社会で子育てをする際に課題にもなっている仕事と子育ての両立を目指すうえで、日本が現在行っている育児休業制度や取組みにも注目し、海外の例を交えながら考察していく。また、昨今新型コロナウイルスの流行により急速に社会全体が激変した。当然子育てを取り巻く環境にも大きな影響を与え、日本のあらゆる子育てに関する問題にさらに追い打ちをかけたといえるだろう。またこれまで潜在していた教育格差の問題が表面化したことなど、コロナ禍により浮き彫りなった日本の子育てにおける問題点をみていく。
 あらゆる側面から日本の子育てをめぐる現状と環境について研究し、課題や問題点に注目しながら考察をし、最後に現代の日本社会が抱える子どもや子育てに関する問題について本論文で論じたことを総括し、未来への展望としてまとめる。具体的に、一般的にテレビなどで目にし、耳にするような大まかな事柄以外にも、これまで根付いてきた潜在的な意識や価値観などが大きく影響しているのではないかということ。同時に、現時点で解決できない問題点について、どうしていくことが望ましいか考え向き合い方を方向付ける。現代の日本の子育て環境における課題は、一つの問題点を解決すれば解消される単純な問題ではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合っている難解な課題であるが、本研究によって一歩でも子育てのしやすい社会を目指し、考えるきっかけにしたい。