佐藤円ゼミ

横田早紀

 私たちのゼミでは、21世紀になった現在においても依然として存在している、「人種」や「民族」をめぐる争いに焦点を当て、それらの問題について各々が理解を深められるよう、日々学んでいます。
 前期には、スチュアート・ヘンリ著の『民族幻想論―あいまいな民族、つくられた人種』という教材を用いて、私たちの中に存在する「人種」や「民族」への固定概念や、何故私たちはカテゴライズする、またされるのか、その「人種」「民族」というカテゴリーの存在を、何を根拠に信じているのか、そういった基本的な問題を検討しました。ゼミ生のそれぞれが教材について個人報告しましたが、その際には、教材の内容だけでなく、自分の意見なども含めて報告し、情報を共有してきました。個人での報告は難しく感じることもありましたが、ゼミのメンバーに内容を理解してもらえるよう、まずは自分がその内容を一番理解するよう努力し、また教材の内容から派生した疑問をゼミ生同士で話し合うことで、理解と知識を深めることができました。前期に基礎的な知識を身につけることで、後期で行うゼミ生の個人報告において、より学びを深めていくことが可能になりました。
 後期でのそれぞれの報告は、各自興味のあるテーマを決め、参考文献を基に発表を行いました。今年度のゼミでは「人種」や「民族」に限らず、「ジェンダー」や「セクシュアリティ」についても興味を持つ人が多く、その報告の内容は様々です。「人種」の問題は、「ジェンダー」や「セクシュアリティ」の問題と差別構造に関しては似たところが多く、自分たちがその当事者として経験したことを共有しながら、前期に得た知識を活用して議論を広げていくことができました。自分たちの経験談を交えることで、ただテキストを読んで「人種」や「差別」について学ぶのではなく、それらが自分たちの今と密接に関係しているのだということを、それぞれが実感しました。これらの問題は化学や数学のように、必ず正しい答えがあるわけではありません。皆が手探りで、自分たちの考える「正解」を見つけられるよう、ゼミ生と意見交換しながら新たな知識や価値観を身につけ、さらに成長していきたいと思っています。
 今年度はゼミ生が15名と多かったこともあり、自分が思いつかなかったような意見や、難しい質問が提示されることもあり、とても面白い議論に発展することも多々ありました。その中で先生の知識やアドバイスを参考にしながら、それぞれが自分の考えを言語化し、ゼミでの学びをより豊かなものにしようと、日々努力しています。スチュアート・ヘンリから学んだ「人種は社会的構築物である」という認識を使って白人がマイノリティとなりつつあることでその「人種的優位性」が揺らいでいる今日のアメリカを見ると、新たな社会的構築物がこの世界に出現するかもしれない可能性が感じられます。それを念頭に置きながら、「過去」と「今」を比較するだけでなく、「未来」にも目を向け、より先進的な学びをできるゼミを目指し、これからもゼミ生皆と協力して頑張っていきたいと思っています。