日本における「女性誌」から見る女性史
  ―雑誌メディアに描かれる女性像の変遷―

松本莉奈

安藤恭子ゼミ

 女性を主なターゲットにした雑誌メディアである女性誌は、明治期に創刊されて以来、時代の流れを反映しながら女性たちに大きな影響を与えてきた。本論では、これまで出版されてきた女性誌の内容を取り上げ、その時代背景を考察することで、女性が置かれてきた社会的な立場について論じた。
 第1章では、近代化が進み社会変動が激しかった明治期について述べた上で、日本初の本格的な女性誌である『女学雑誌』の誕生の経緯に迫った。当時、恋愛やファッションに関する自由は制限されていたものの、女性の社会的な立場には大きな変化があった。こうした風潮を汲み取り、女性誌は誕生したのである。
 第2章では大正期、第3章では昭和期の女性誌について取り上げた。男女平等の動きが拡大したことに加え、教育および生活水準の向上が後押しとなり、女性誌は読者を増やしジャンルも豊富になっていったことがわかった。
 第4章では、女性たちの関心を集めていたこれまでとは一変し、女性誌を含む出版物の売り上げが急減している現状について分析した。そして、こうした状況に対する出版各社の動向について論じた。
 女性誌は、その時代の女性像を創造し、生き方に迷う女性たちを牽引しながら、女性たちの道しるべとしての重要な役割を果たした。一方で、女性たちの自由な生き方に新たな制限を生み出したともいえる。女性の自由のために誕生した女性誌は、皮肉にも女性から自由を奪う側面があった。
 現代では、性や人種などに関する人権問題に対して、国際的な取り組みがなされるようになり、少数派の意見も受け入れられるようになった。こうした世界的な状況下にあって、女性たちは流行や周囲の価値観に左右されることが少なくなっている。それは、これまでの女性誌の役割が失われたことを意味する。しかし、女性が日々を楽しむためのアイディアを提供し、絶えず課題と向き合うことが不可能になった訳ではない。女性誌は、SNSを中心とした新たなメディア媒体と融合しながら、女性の自立のための手段を提供し続けるのではないかと考える。