変わりゆくイギリス王室とメディア ―ヴィクトリア女王から現在の王室まで―

寺田歩加

上野ゼミ

 本論文ではヴィクトリア女王から、エリザベス女王やダイアナ妃までを取り上げ、王室とメディアの歴史的な関係について見ていく。
 第1章ではヴィクトリア女王を取り上げる。ヴィクトリア女王の即位50周年を祝う式典ゴールデン・ジュビリーと即位60周年の記念式典であるダイヤモンド・ジュビリーにおけるメディアの役割についてみていく。またイギリスの代表的な新聞について紹介し、それぞれの新聞の特徴について述べる。 第2章ではヴィクトリア女王の孫にあたるジョージ 5 世とその息子であるエドワード 8 世についてみていく。王室の伝統を大切にするなど真面目な性格で知られたジョージ 5 世だが、意外なことにイギリス王室で初めてラジオを通して玉音放送を行った人物である。長いイギリス王室の歴史上初めて行われた国王による玉音放送における国民の様子や反響についてみていく。また、ジョージ 5 世の息子エドワード 8 世は自由奔放な性格で多くの女性と関係を持ったが、アメリカ人で離婚歴のあったシンプソン夫人ウォーリスと本気の恋に落ちた。2人の関係に対して国民や側近たちからの不満の声が大きくなったことで国王エドワード8世は王位か、ウォーリスかを選択しなければならなくなった。このエドワード 8 世のスキャンダルとメディアの関わりについて整理する。
 本論文の中心となる第3章ではチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式の報道をみる。『タイムズ』と『デイリー・テレグラフ』を中心にどのようなことが報じられたのかを見ていき、 結婚式でのイギリス国民と世界各国の様子、そしてメディアによるダイアナ妃のイメージについて明確化する。この結婚式を新聞各紙は「FAIRY TALE」という言葉を使って表現していた。なぜ「FAIRY TALE」という言葉が使われたのだろうか。それは貴族階級の出身であるが、幼少期に両親が離婚するなどけして幸せとは言えない環境で育ったダイアナが王子様と結婚するといういわばおとぎ話のような出来事であったため、この結婚式は 「FAIRY TALE」という言葉を使って表現されたのではないかと考えた。他にも、新聞記事の内容についての分析を行った。
 第1章で取り上げたヴィクトリア女王とダイアナ妃は生きた時代も立場も違う女性であったが、イギリス王室の歴史を語る時には、必ずと言っていいほど2人が登場する。なぜヴィクトリア女王とダイアナ妃は今なお人気が高いのだろうか。その理由の一つにメディアが関係していると考えた。そこでヴィクトリア女王の2つのジュビリーとダイアナ妃の結婚式をメディアの報道と共に比較した。その結果、どちらのイベントでも、メディアはイギリス全土、ひいては国民が一体となったことを示したかったのではないかと考えた。