卒業論文中間発表概要2

日本のペットショップにおける福祉と営利の両立
―日英比較を通じた譲渡型モデルの提案―

小早川瑠菜

 近年、日本ではペットが家族の一員として認識される傾向が強まり、医療や保険、フード、葬儀といった関連産業も大きく成長している。一方で、ペットショップにおける犬猫の店頭販売が依然として主流であり、営利が先行する構造の中で動物福祉が十分に尊重されているとは言い難い現状がある。売れ残りや過剰繁殖といった課題も深刻であり、ペット流通全体の在り方が改めて問われている。
 本研究では、まず日本と海外、特に動物福祉先進国であるイギリスとの比較を行った。イギリスでは、第三者販売を禁じる「Lucy’s Law」をはじめ、店頭販売を規制し、シェルターを中心とした譲渡型の仕組みが整備されている。国の支援もあり、動物を「命」として扱う文化が根付いている。一方、日本では歴史的に動物を「商品」として扱う傾向が強く、繁殖業者からオークションを経由して店舗に並ぶ流通構造が一般化している。この制度と文化の違いが、動物の扱い方や福祉水準に大きな差を生んでいる。
研究を進める中で私は、はじめ「日本も海外のように店頭販売を全面的に廃止し、譲渡型へ移行すべきだ」と考えていた。しかし、株式会社AHBとNPO法人アニマル・ドネーションへのインタビュー調査を通じて、考えに大きな変化が生まれた。企業側は営利を前提としつつも「最後まで責任を持つ仕組み」を構築しようとしており、NPO側は売れ残りや繁殖引退犬猫を引き取りながら、公的支援の少なさに課題を感じていた。両者に共通していたのは、「日本の環境では海外型の完全譲渡モデルをただ導入するだけでは機能しない」という認識であった。
 土地の広さや制度の整備状況、ブリーダー環境のばらつきなど、日本特有の実情を踏まえると、店頭販売の全面廃止は現段階では現実的ではない。むしろ、現在の生体販売型の仕組みそのものを福祉の視点から改善し、「販売方法」や「輸送方法」を変えていくことの方が、実効性のあるアプローチだと理解するに至った。
 以上の考察から、本研究の意義は「営利と福祉の対立構造を超え、日本に適した動物福祉モデルを描くこと」にあると言える。今後は、企業とNPOの連携可能性や、福祉基準に沿った新たな販売モデルの提案を通じて、日本のペット産業における持続可能な仕組みづくりを探求していきたい。