渡邉ゼミ

音楽・舞踊と異文化理解
〜フラメンコ・ヒップホップ・レベティコ〜

菊地美温

 本論文は、いわゆる下層階級あるいは民衆の中から生まれた文化が、現代では世界的に有名な文化として知られるようになった過程や理由について考察したものである。また、この論文で取り上げるギリシャ音楽のレベティコは、この過程の途中段階にあると考え、レベティコが世界的に広まるまでの展望を述べる。  第一章では、この卒業論文を作成するに至った理由やきっかけを表記し、題目に入れた言葉一つ一つをどのような意図で論じるのかについて具体的に述べる。
 第二章では、いわゆる下層階級あるいは特定の民族・民衆の中から生まれた文化の例として、ロマ族によるフラメンコとアフリカ系アメリカ人の若者によるヒップホップの2点を取り上げる。どちらも、現代で世界的に有名な文化だといえるが、その歴史の始まりを見ると最初から社会に受け入れられていた文化(そしてそれを担う人々)とはいえないという共通点がある。レベティコは、世界的に知られている文化とはまだいえないと考えるため、これらニつの文化を取り上げることでレベティコが今後どう展開していくべきか考察する材料になると考え、取り上げる。
 第三章では、いわゆる下層社会で生まれた音楽・舞踊のレベティコを取り上げる。過去にヨーロッパ文化研修に参加した際の現地での音楽体験や、大学内で開かれたイベントでのギリシャダンスの体験を踏まえて、レベティコと社会の関係性、具体的な舞踊形式、レベティコがギリシャ国内で展開してきた歴史などについて述べる。
 第四章では、これまでの章で説明したようないわゆる下層階級の文化が国際的にメジャーな存在になっていくことに対して、文化に触れる中で人々が見失ってはいけない姿勢とは何かについて論じる。まず、文化が創造される段階について論じ、目的や存在意義など文化を構成する上で核となるものについて説明する。そして、それを踏まえて、異文化を理解する上で文化を創造する際に持たれた意思や社会への主張が現代ではあまり注目されていないことを問題として取り上げる。また、本章の最後には、異文化理解と世界のデジタル化との関係性などといった異文化理解の現状を確認し、本当の異文化理解をするためにはどのような精神や姿勢が必要であるかについて述べる。
 第五章では、まとめの章として現代の異文化理解の中で問題視すべきことと文化とは何かについて、改めて再確認し考察する。レベティコの今後の展開がより良いものになるように、音楽や舞踊の魅力だけでなく、歴史を踏まえることで文化のさらなる価値を見出せるということを説明する。
 私は、本論文で取り上げたロマ族によるフラメンコ、アフリカ系アメリカ人の若者によるヒップホップのように、世間のはみ出し者として扱われた人々によるレベティコがいつか世界の多くの人々に認知され、日の目を浴びる存在になることを望む。そして同時に、この文化が生み出された当初の人々の想いや声が、新たに文化に触れる人々によって薄れることなく広がり続けることも望む。