本研究は、美容医療ツーリズムという現象を、美容と観光が結びついた新しい行動様式として捉え、日本人があえて日本ではなく韓国を選んで美容医療を受ける背景と動機を明らかにすることを目的とした。近年、世界的に美容医療が発展し、日本においても美容医療ツーリズムが注目されるようになったが、その中心地として韓国が特に支持されている理由には、多様な社会的、文化的要因が関係していると考えられる。そこで本研究では、文献調査に加え、YouTube 上のインフルエンサーによる発信内容を分析し、SNS がもたらす影響力についても検討を行った。
第1章では、美容医療ツーリズムが拡大してきた背景として、医療技術の進歩、SNS による情報共有の拡散、そして韓国政府による受け入れ体制の強化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。これらの要素が重なったことで、韓国は海外から多くの患者を引きつける「美容医療の中心地」として位置づけられ、日本人にとっても安心して訪れやすい目的地となっていることが示された。
第2章では、日本人の美容意識が「自然で自分らしい美」へと変化していること、さらに韓流ブームや SNS の影響によって韓国の美容文化が身近になったことが、美容医療ツーリズムの受容に大きく関わっていることを確認した。韓国は技術の高さ、費用の明瞭性、短期間で行ける距離的近さなどから、特に若い世代にとって利用しやすい選択肢となっている。また、実際の利用者の満足度も高い一方で、継続的に通いにくいといった課題も見られた。
第3章では、日本人が韓国を選ぶ動機が単一ではなく、SNS で共有される理想の美への共感、旅行との組み合わせによる新しい消費スタイル、国内医療への不満など、複数の要因が重なり形成されていることを示した。このように、文化、情報、体験の三要素が結びつくことで、韓国は日本人にとって「手が届きやすい美」の象徴となり、美容医療ツーリズムの主要な目的地としての地位を確立している。
第4章では、韓国は日本人にとって自らの美容観を見直すための「鏡」であると同時に、技術と価格のバランスが取れた現実的な選択肢として機能していることを明らかにした。また、仮に韓国が市場から抜けても、美容医療ツーリズム自体は他国で継続される可能性があるが、美意識やトレンドを世界に発信する中心的役割は韓国以外には代替しにくいことも示された。さらに、韓流ブームが韓国的な美の理想像を普及させたことにより、美容医療ツーリズムが発展する土台が築かれたと考えられる。
以上より、日本人が韓国を美容医療の目的地として選択する背景には、技術や価格といった合理的理由に加え、若者たちの自分を理想と重ねる同一化、文化的魅力、SNS による情報の透明性、旅行体験と結びついた総合的な価値など、多様な要素が重層的に関わっていることが明らかとなった。韓国は技術面のみならず、文化の発信力や美の価値観の形成を通して美容医療ツーリズムを支えてきた重要な存在であると結論づけられる。