佐藤円ゼミでは、「人種」や「民族」をめぐる社会問題を中心に、これらの概念がどのように生まれ、なぜ現在も社会に根強く残り続けているのかを考察しています。今年度は、スチュアート ヘンリ著『民族幻想論 あいまいな民族、つくられた人種』をテキストとして用い、ゼミ生がレジュメを作成し、議論を進める形式を取っています。 今年度は人数が昨年より少ない分、一人一人が興味のあるテーマを深く掘り下げる時間を十分に確保できています。レジュメ作成の際には、テキストの内容にとどまらず、自身の疑問に基づいて関連事例や報道記事を調べ、それを共有することで、より密度の高い議論が生まれています。例えば、アメリカの教育番組「セサミストリート」におけるキャラクター構成の多様化を取り上げ、教育レベルでの実践の可能性を検討しました。また、スポーツの分野において、人々の意識の中に存在する「人種」に対する偏見を深く掘り下げ、社会がつくり上げている「人種」像を明らかにしました。日本には人種差別がないと考えられがちですが、無意識のうちに、自身に組み込まれている偏見を私たちの日常や経験に接続しながら、問い直しています。
今年度は、群馬県大泉町で日系ブラジル人の方を招いた講演を中心としたゼミ合宿を実施しました。実際の生活経験や心境を当事者から直接聞き、日系ブラジル人として日本で生きることへの苦悩を知りました。特に、「日本人」と「ブラジル人」という二面性の間で揺れ動くアイデンティティを、どのように確立していったかという話が印象的でした。日本に住むマジョリティの私たちにとって、自分たちの立場や前提を見つめ直す、非常に意義深い時間となりました。「多文化共生」を目指す時代に、受け入れ国の法や制度が整ったとしても、異文化理解に対する一人一人の姿勢が必要不可欠であると実感しました。
本ゼミでは、合宿に加えて、校外学習や映像資料を用いた学習を行っており、能動的な学びを重視しています。このような学びを通じて、当たり前とされてきたことを疑う視点を身に付けることができました。世界中における「人種」や「民族」に関わる問題を取り上げるだけでなく、私たちの日常生活に潜んでいる社会構造を発見し、差別や排斥がどうして起こるのかという根本的な問いに向き合っています。
佐藤先生は、歴史研究者としての豊富な知識と実体験をもとに、学生が気づきにくい視点や事例を提示して下さいます。学生の興味、関心に合わせて、教材や題材を工夫して下さるため、自分自身の視野を広げるきっかけが多くあります。本年度の学びを通じて、私たちは「当たり前」を問い直す姿勢と、多角的に物事を捉える力を養うことができました。議論や合宿、校外学習などで得た気づきは、卒業論文において自分の関心をより深く掘り下げる土台となっています。「人種」や「民族」など、身近な経験から広がるテーマを自らの言葉で探究し、社会への理解をさらに深めていきたいと考えています。